ユーロ2024で大活躍したスペインのラミン・ヤマルを大解剖「バレーボールのトスのようなパス」 (4ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【場数を踏み、トライし続けることで選手は伸びる】

 スペイン代表ではレギュラーポジションを獲得し、ユーロ2024優勝の立役者にもなったが、バルセロナには同じポジションにブラジル代表のラフィーニャがいる。新シーズンはシャビ・エルナンデスからハンジ・フリックへ監督が代わることもあり、ヤマルのポジションが保証されているわけではない。ただ、バルセロナでプレーすることは間違いなく、さらなる成長へつながると考えられる。

 バルセロナは伝統的にウイングを重視している。ボール保持力は抜群で、普通のチームでは考えられないくらい多くのパスが供給される。ウイングが孤立することはなく、格段にプレー機会が多い。

 昨季、バルセロナにおけるヤマルはすばらしいプレーをする反面、まだミスも多かった。ただ、6歳からこのクラブの哲学の下で成長してきた選手なので戦術的な適応力は高く、何よりまったく臆することなくチャレンジを続けていた。

 トライし続けることで選手は伸びる。トライすることでエラーも起きるが、場数を踏むことでミスは減っていく。仮にヤマルが弱小チームでプレーしているなら、プレー回数自体がかなり制限されて経験値はなかなか上がらず、成長のカーブは緩やかなものになってしまうだろう。

 ドリブル突破だけでなく、得点やアシストというわかりやすい結果を出すために不可欠なキックの威力があり、年齢は若いが戦況判断も的確にできる。あと20年もプレーできそうなだけに、将来どんなプレーヤーになっているか想像できないくらいだ。

著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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