ユーロ2024で大活躍したスペインのラミン・ヤマルを大解剖「バレーボールのトスのようなパス」 (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【ウイングは早熟の天才のためのポジション】

 ウイングは早熟の天才のためのポジションと言えるかもしれない。

 ジョージ・ベスト(北アイルランド)は17歳の時にマンチェスター・ユナイテッドでデビュー、22歳でバロンドールを受賞した。クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)がスポルティングでデビューしたのも17歳、翌シーズンにはマンチェスター・ユナイテッドに移籍してクラブのエースナンバーである7番をつけた。リオネル・メッシのバルセロナでのデビューもやはりウイング。年齢も17歳だった。

 ヤマルは偉大な先輩たちより早い15歳のプロデビューだったわけだが、10代でデビューする選手はウイングであることが多い。17歳の時にマンチェスター・ユナイテッドでボランチとしてデビューしたコビー・メイヌー(イングランド)のような例もあるが、フィジカルの強さと経験を求められるセントラルMFのレギュラーポジションを10代の選手が獲るケースは珍しい。

 ウイングに求められるのは速さ、そしてドリブルの突破力、得点力。プレーの制約が比較的少なく、才能に任せて思いのままにプレーできる点で、10代の選手にフィットしやすいポジションと言える。古くはアルフレード・ディ・ステファノ(スペインほか)やボビー・チャールトン(イングランド)もデビュー時はウイングだった。

 ヤマルは天性のウイングプレーヤーに見えるが、このまま右サイドでプレーし続けるかどうかはわからない。ディ・ステファノ、チャールトン、ロナウド、メッシがその後、中央へポジションを移しているように、ヤマルも数年後には違うポジションでプレーしていても不思議ではない。

 現在でもサイドに張りっぱなしではなく、スペインのウイングの流儀としてハーフスペース(サイドと中央の間)でのプレーも多い。将来的にはそちらが主戦場になっていく可能性もあるのではないか。

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