ユーロ2024で大活躍したスペインのラミン・ヤマルを大解剖「バレーボールのトスのようなパス」 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【懐にあるボールをそのまま蹴り出せる】

 ここまでは軸足リードの一般的な利点だが、ヤマルにはプラスアルファのアドバンテージがある。

 懐にしまってあるボールを、ほぼそのままの体勢で蹴り出せるのだ。DFが縦突破を警戒して体のほうに正対した際、ヤマルは左足アウトで切り返すことなく、そのまま左足でクロスを蹴ってしまうことがある。緩く縦へボールを運びながら、DFの右側の空間にボールを通してしまうのだ。

 しかも、この懐から蹴り出すようなキックの精度がすばらしく、空中にボールを置くようなクロスボールを蹴る。バレーボールのトスのようなクロスをゴール前にいる味方の頭上にピタリと合わせる。

 ウエイトは右足のほうにかかっていて、体も右へ傾いているのに、左足のキックの瞬間には軸足の右足が地面から離れていることも多い。一瞬で蹴り足加重に切り替えている。このしなやかさは独特だ。

 左足の外へ置いた、遠くにあるボールを正確に蹴れるので、キックフェイントの切り返し幅も大きい。さらにキックフェイントで縦へ持ち出すとみせて、再度カットインを狙う動きもスムーズにできる。リーチの長さと体の柔らかさ、遠くに置いたボールを正確に蹴る能力の合わせ技で、抑えがたい複数の型をものにしている。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る