荻原拓也の本音は「森保監督に申し訳ない」 左SBが本職じゃない選手を起用せざるを得ない状況に「情けない」 (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke

【みんなで朝までどんちゃん騒ぎしていた】

 練習でも、試合でも、ブレることなく、今の自分にできることを100パーセント示そうと努力してきた結果でもあった。

「そのマインドによって、チャンスが来た時にちゃんと力を発揮できた。それがとんでもない自信になって、自分のなかで、間違いじゃなかった、続けてきてよかったなって思うことができました」

 日本とは異なる文化でひとり、戦うことで掴んだ確かな成長でもある。

 リエカ戦に2-1で勝利したあとにも、荻原は文化の違いを大きく噛み締めていた。

「性格的なところも相まって、チームメイトのみんなが自分に対して好感を抱いてくれていたのはわかっていましたけど、大一番で結果を出したら手のひら返しとまでは言わないけど、今まで以上に距離感が変わって。

 以前は『お前の能力も、ポテンシャルも認めている』みたいな感じで言ってくれていたんですけど、アシストしたあとは、それがもう何十倍にも膨れあがるみたいな。それこそ大一番に勝ったことで、お祭り騒ぎみたいになっていました」

 アウェーでの試合を終えて、ザグレブのクラブハウスに戻ると、大勢のファン・サポーターが出迎えてくれた。いくつもの発煙筒が焚かれ、数えきれないほどの花火が打ち上げられる光景に、さすがの荻原も驚いた。

「別に(その勝利で)リーグ優勝が決まったわけじゃないんですよ? 優勝が決まったわけじゃないのに、クラブハウスでチームメイトのみんなも、朝までどんちゃん騒ぎしていた」

 その時も荻原は、光栄なことに"ご指名"を受けた。

「ロッカールームで、チームメイトから『テーブルの上に立って踊れ』って言われて。2秒ぐらいで覚悟を決めて、行動に出ました。『マジでやりたくない』っていうのが1秒あって、そこから1秒で覚悟を決めるんです」

 その性格、コミュニケーション能力も、受け入れられたポイントだろう。

「通訳の方がすばらしくて、本当に支えてくれているのですが、やっぱり言葉の壁はある。それでもチームメイトは、僕がクロアチア語を話せるわけじゃないのに、わざと話しわけてくるんです。『全然、しゃべれないなー』とか言って(笑)。

 それでも、コミュニケーションを取ってくれる。もともと(金子)拓郎くんがいたからか、チームメイトも日本語で話してくる。ホント、どこから仕入れてきたっていうくらい、意味のわからない日本語を叫んできたりするんですけどね」

 それに負けじとリアクションするから、チームメイトは受け入れてくれたし、さらなるコミュニケーションも生まれたのだろう。

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