ユーロ2024「つまらないサッカー」と言われようとも...21歳ベリンガムの戦いはまだ終わらない (2ページ目)
【叩かれまくるベリンガム。本当はいい奴?】
ドイツ最大のタブロイド紙ビルトのスポーツ版『SportBild』でさえも、「ベリンガムはドルトムントに在籍していた頃も評判が悪かった」と掲載。ドルトムント時代のベリンガムが試合後にファンからセレブレーションを受けている際、拍手を受けてから前に出る主役然とした振る舞いにチームメイトは腹を立てていた......という話まで掘り起こしている。
その記者は「アーリング・ハーランドがマンチェスターシティに去ったので、おくれをとったことに焦りがあったのだろう」と推察まで加えていた。実際に選手から話を聞いて書いているだろうが、これはもう、ただの悪口だ。ベリンガムには気の毒だが、パフォーマンスを発揮できないとこんな検証しようもない話まで書かれてしまう。
しかしベリンガムは、スイス戦後も毅然とした態度で前向きな姿勢を貫いている。BBCのインタビューに対して「今大会で最高のパフォーマンスだった」と答え、「試合をかなりコントロールできていたし、スイスのようないいチームに先制された瞬間でも、まだ守備には余裕があった」と話し、0-1になってもなお焦りはなかったと語っている。
攻撃に関しては課題を感じているものの、それにも自信を示す。
「まだ大きなチャンスが少し足りない。ただ、チャンスは十分につくれなかったが、多くの相手を脅かす攻撃と、すばらしいプレーはあった」
また、5人全員が成功したPK戦についても胸を張った。
「仲間を誇りに思う。キャラクターやメンタリティは目に見えないものだが、それをPKで証明することができた。試合の途中から出てきて10回もボールタッチしていない選手が、国中の期待を背負ってPKを蹴るなんて特別なこと。成功した選手たちは特別な選手だ」
彼が発するコメントを聞いていると、自身のゴールが遠くなろうともチームプレーに徹しようとする、なかなかいい奴に見えてくる。
もちろん、ベリンガムの本当の姿はわからない。だが、周囲から「つまらないサッカー」と揶揄されながらも、主軸としてチームを準決勝まで導いている。イングランドは前回大会、決勝戦まで上り詰めながらもPK戦の末にイタリアに敗れた。その苦い記憶を払拭することができるか、ベリンガムの戦いは続く。
著者プロフィール
了戒美子 (りょうかい・よしこ)
1975年生まれ、埼玉県出身。2001年サッカー取材を開始し、サッカーW杯は南アフリカ大会から、夏季五輪は北京大会から現地取材。現在はドイツを拠点に、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材中。著書『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(講談社)。
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