コパ・アメリカ2024でロドリゴはブラジル代表を救えるか サッカー王国の必殺技「タベーラ」の使い手 (4ページ目)
【中央突破はますます難しくなっている】
コパ・アメリカ2024のブラジルにロドリゴとルーカス・パケタはいるが、ネイマールを欠いている。ロドリゴは曖昧なポジショニングから中央突破を先導したが、ついにコスタリカの堅陣を崩しきれずスコアレスドローに終わった。
同時進行中のユーロ2024では、中堅国の健闘が光っている。ブラジル風の中央突破が得意なフロリアン・ビルツ、ジャマル・ムシアラ、イルカイ・ギュンドアン、カイ・ハヴァーツを擁するドイツだが、グループリーグ最終戦はスイスに1-1だった。90+2分の同点弾は、タベーラとは何の関係もない放り込みからのヘディングである。
強豪国に対抗するために守備の精度と強度を高めてきた中堅国は、簡単に相手の突破を許さなくなっている。強豪相手にボールは支配されても、接戦に持ち込めている。
タベーラは均衡状態を打ち破る決定打、カウンターとセットプレーの中堅国にない武器であるはずなのだが、それさえも通用しなくなったのかもしれない。ネイマール不在とはいえ、タベーラの使い手として現代最高クラスのロドリゴを擁しても、ブラジルは得点できなかった(2戦目のグループ最下位・パラグアイ相手には、タベーラから先制点を挙げたが......)。
過去の偉大なチームは常に中央の強みがあった。
1950年代のスーパーチームだったハンガリー代表は「偽9番」ナンドール・ヒデグチとフェレンツ・プスカシュのコンビがあり、1970年代のオランダにはヨハン・クライフとヨハン・ニースケンスのダブル10番、1980年代はディエゴ・マラドーナ(アルゼンチン)とミッシェル・プラティニ(フランス)が「ペレ」だった。現在は言わずと知れたリオネル・メッシがいる。何よりブラジルは伝統を継承してきた。
万が一それが通用しない、消滅するという事態になるなら、もはや強豪国というカテゴリーもなくなっていくのかもしれない。だが、おそらくそうはならないだろうし、そうならないと期待したい。
著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。
【画像】コパ・アメリカを戦うブラジル代表のフォーメーション
4 / 4