ユーロ2024優勝候補の呼び声高いイングランド ここまで2戦がピリッとしないのはなぜか? (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【苦戦しているのに交代枠を使いきれない】

 相手は5バック。「引いて構える相手を崩すにはサイドから攻めよ」との鉄則から外れたサッカーでもある。デンマーク戦の後半9分、フォーデンが真ん中に入り込み、大きな切り返しから左足でグラウンダーのシュートを狙うと、ボールはポストを直撃した。イングランドに惜しいシーンはあった。だがそれでも、その中央攻撃は理屈から外れた強引で非効率的な攻めに見えた。

 フォーデンは初戦のセルビア戦はフル出場。さすがにデンマーク戦は後半24分、エベレチ・エゼ(クリスタルパレス)と交代でベンチに下がっている。だが、サカと交代で入ってくるジャロッド・ボーウェン(ウェストハム)、そしてそれぞれを下支えするSBウォーカーの、右サイドの関係に比べると頼りなく見える。

 フォーデンが中盤選手然とプレーする姿は、かつてのスペイン代表を想起させる。うまい中盤選手は山ほどいるが、特筆すべきウインガー不在。スペインは中盤選手を外に回し、急場を凌ごうとした。だが、最近はその中盤サッカーが限界を迎えていた。ユーロを連覇(2008年、2012年)し、その間に行なわれた南アフリカW杯と合わせて3連覇した頃の勢いは、ここ数年はなくなっていた。

 ところが今回は、ニコ・ウイリアムズ(アスレティック・ビルバオ)とラミン・ヤマル(バルセロナ)という強力な両ウイングが出現。スペインは内と外とのバランスに長けた攻撃を繰り広げる。今回のイングランドに処方したい"薬"に見えて仕方がない。

 サウスゲート監督の交代術にも懐疑的な目を向けたくなる。セルビア戦で使用した交代枠は3人で、デンマーク戦は4人だった。2試合で3枠も余したことになる。7試合を戦い抜こうとする監督の采配としては物足りなく映る。

 苦戦するにしても、一方で多くの選手を使っているなら、将来の可能性は広がる。逆に、同じメンバーで苦戦すると、将来の可能性も狭まる。要するに打開策が見えていないのだ。

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