ユーロ2024優勝候補の呼び声高いイングランド ここまで2戦がピリッとしないのはなぜか? (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【目につく左右のバランスの悪さ】

 セルビア、デンマークに対して1勝1引き分け。相手が欧州の中堅国であることを踏まえると、特に問題のある成績ではない。決勝まで全7戦。そこから逆算すれば、無難な滑り出しに見えなくもない。しかし、試合の中身に目を凝らすと、やはり本命と呼ぶには頼りないサッカーに映る。

 初戦で戦ったドラガン・ストイコビッチ監督率いるセルビアは、同監督の現役時代のキャラとは裏腹に、極めて地味に5バックで臨んできた。後方を固める作戦で優勝候補の本命に相対した。ところが開始13分、いきなり失点を喫してしまう。セルビアの守備的な作戦はその瞬間、破綻した。

 だがイングランドは、結局、その1点に終わった。試合内容も前半こそやや優勢に進めたが、後半は時間の経過とともに、セルビアにいつ同点に追いつかれても不思議ではない、危なっかしい展開になった。

 続くデンマーク戦も似た展開だった。このチームもイングランドに対し5バックで臨んできた。そして前半18分、ケインに先制ゴールを許すことになる。守備的に出ながら早々と失点する"間"の悪さに、イングランドは再び救われることになった。

 この試合も、イングランドは時間とともに徐々に相手の攻勢を許すことになるが、セルビア戦との違いは同点弾を浴びたことだ。スポルティングで守田英正と並んでプレーするMFモルテン・ヒュルマンドにきれいなミドル弾を蹴り込まれた。逆転されてもおかしくない劣勢のなかでタイムアップの笛を聞いた。

 今後に向け、まさによくない終わり方だった。問題は、改善されそうな要素が見当たらないことだ。

 最も目につく点は左右のバランスの悪さだ。右のサカが文字通りのウイングプレーで縦突破を狙うのに対し、左のフォーデンは中盤選手然とプレーする。そのプレースタイルはアタッカーには見えない。また、フォーデンを下支えするトリッピアーは攻撃参加には非積極的だ。堅実ではあるが今日的SBとは言えない。よって、フォーデンが中に入ると左サイドはまったくの推進力不足に陥る。

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