なぜアメリカは女子サッカーが大人気なのか? 現地日本人コーチが語る日米のリアルな格差 (3ページ目)

  • text by Saku Yanagawa

NWSLのシカゴ・レッド・スターズが、シカゴ・カブスの本拠地であるリグレーフィールドで史上初の公式戦を行なった photo by Saku YanagawaNWSLのシカゴ・レッド・スターズが、シカゴ・カブスの本拠地であるリグレーフィールドで史上初の公式戦を行なった photo by Saku Yanagawaこの記事に関連する写真を見る そのために選手ひとりひとりへの丁寧なコーチングは欠かさない。その日の選手の心身のコンディションを考えながら、それぞれに合わせたアプローチで対話を重ねる。

「当然、選手やスタッフには英語で伝えるので、語学力も求められますね」

 高校時代に、言葉の壁で苦労した経験があるからこそ、コミュニケーションの大切さは誰よりも理解している。

「アメリカの女子サッカーはこれまで、身体能力を生かした個人技に頼るプレースタイルが多かった。対して日本は組織力を生かした、戦術重視のサッカーです。だから、日本を経験した日本人のコーチとして、アメリカで日本のよさを生かせると思っています」

 そう語る辺見が取り入れる戦術的なサッカーで、レッドスターズは昨年のリーグ最下位という成績から、現在14チーム中6位と躍進を遂げている。

「もちろん勝負の世界にいる以上、試合に勝った、負けたはあります。でもそれ以上に、選手のピッチ内外での成長に直接的に貢献できることが、この仕事のやりがいだと思っています。そしてその成長が、ひいては勝利の確率を上げることにもつながると思っています」

 チームのエース、マロリー・スワンソンは昨年の膝の大ケガを乗り越え、アメリカ代表の中心選手に成長したほか、ベテランGKのアリッサ・ネイハーは代表でも守護神として君臨し続け、若手DFのサム・スターブも今シーズンの活躍が認められ代表デビューを飾った。

「選手が辛いケガを乗り越える過程に寄り添えたことや、ひとつ上のステップに階段を上るサポートをできることが最高にうれしいんです。自分の周りの選手やスタッフを満足させて、幸せにできたと感じたときは達成感がありますね」

 実直な人柄で、選手からは「マック」の愛称で慕われている。そんな彼に、今シーズンからチームを率いる元ジャマイカ代表監督の"名将"ローン・ドナルドソンも絶大な信頼を寄せている。

【日米の間にあるリアルな格差】

 日本女子サッカーのよさをアメリカに伝えてきた一方で、辺見はそのリアルな現状も見つめている。

「競技人口と環境には圧倒的な差がありますね」

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