なぜアメリカは女子サッカーが大人気なのか? 現地日本人コーチが語る日米のリアルな格差 (2ページ目)

  • text by Saku Yanagawa

 サッカーを通じてチームメイトとの交流を深めながら、異国の地で技術を磨いた辺見は、大学進学ののち、MLSコロラド・ラピッズのU−23チームと契約する。そして、同チームにて信頼を勝ち取り、キャプテン・マークもつけるなど活躍。その後、ドイツのヴィクトリア・アルノルトシュヴァイラーやプエルトリコのセビージャFC、ラトビアのFBグルベネでもプロ選手としてプレーした辺見は2013年、27歳で現役を引退した。

「最初は指導者になると思っていなかった」

 そう振り返るように、引退後の辺見は一度大学に戻り、石油工学の学位を取得。アメリカでサラリーマンとして働いた異色の経歴を持つ。仕事終わりにボランティアで地元の子どもたちにサッカーを教えていた際、指導の魅力と自身の特性に気がついたという。

 2016年にコロラド州の強豪、デンバー大学からコーチの要請を受け、指導に当たっていると、2020年INAC神戸レオネッサからのオファーが舞い込んだ。

「生まれ育った国で、コーチングを学びたい」と、悩んだ末に帰国。そのシーズン、INACは見事リーグ優勝を果たし、WEリーグの初代王者に輝いた。

 再びアメリカに帰国した2022年から男子のプロチームでコーチを務めたのち、今季からシカゴの女子サッカークラブ、レッドスターズでコーチとして指導にあたっている。

【アメリカで生きる日本の組織力】

 コーチとしての辺見の仕事はじつに多様だ。ピッチの上での選手への指導やマネジメントはもちろん、相手チームや自チームの資料づくりも行なう。iMovieやファイナルカット・プロなど複数の編集ソフトを用いて、自ら映像を編集し、それを毎週チームにプレゼンする。

「すべては勝利につながるための仕事です。試合前の準備は意外とやることが多いです。ピッチでの仕事と同じぐらい、デスクでの仕事も多いんです」と辺見は笑う。

「僕の仕事は、選手に"Decision−Making"を教えること。つまり、選手があらゆる局面で、どのように自分自身の持っている能力を最大限に発揮する判断をしていくかを教えることなんです」

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