ユーロ2024開催国ドイツは16強以降を見越した戦いに 「ムシアラ」への依存度をどうとらえるか (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 弊害を挙げるなら、右からの攻撃が左に比べて弱かったこと、ライン際からの折り返しは皆無だったことぐらいだ。しかし、相手のレベルが上がれば、そこは確実に穴となる。スコットランドだから成立した話でもあったのだ。同様なスタイルで向かってくるハンガリーとの一戦も、大きな問題は起きないだろう。

 後半18分、ドイツベンチはビルツに代わってレロイ・サネ(バイエルン)を投入。ムシアラを左に回し、サネを右ウイングに据えた。右から攻撃する機会は増えた。左右のバランスは整ったかに見えた。しかし、サネは空回りした。ドイツの攻撃は、ムシアラがトーマス・ミュラー(バイエルン)と交代でベンチに下がった後半29分まで、"ムシアラありき"になった。その奔放さに頼るサッカー。これをどこまで深刻に受け取るか。

 グループリーグの残り2試合は大丈夫でも、一発勝負の決勝トーナメントになると話は変わってくる。少なくとも優勝は、左右のバランスが整わない限り難しい。ドイツには強烈なストライカーがいないので、なおさらそう感じる。ナーゲルスマン監督はハンガリー戦をどう戦うか。先を見越した戦いができるか。見ものである。

プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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