ユーロ2024開催国ドイツは16強以降を見越した戦いに 「ムシアラ」への依存度をどうとらえるか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【ボール保持者として輝くムシアラだが...】

 この日、ドイツは以下の11人がスタメンに並ぶ4-2-3-1だった(カッコ内は2023-24シーズンの所属チーム)。

 GKマヌエル・ノイヤー(バイエルン)、左SBマクシミリアン・ミッテルシュテット(レバークーゼン)、CBヨナタン・ター(レバークーゼン)、アントニオ・リュディガー(レアル・マドリード)、右SBヨシュア・キミッヒ(バイエルン)、守備的MFトニ・クロース(レアル・マドリード)、ロベルト・アンドリッヒ(レバークーゼン)、攻撃的MFイルカイ・ギュンドアン(バルセロナ)、左FWフロリアン・ビルツ(レバークーゼン)、CFカイ・ハヴァーツ(アーセナル)、右FWジャマル・ムシアラ(バイエルン)。

 この11人のなかで、記載されたポジションにいる時間が最も少なかったのは、ムシアラだ。右の高い位置で、左のビルツと同じバランスで構えた時間はごくわずかだった。むしろ決められたポジションがないフリーマン的な選手に見えた。

 その結果、右サイドはキミッヒがひとりでカバーすることになった。3-4-2-1で構えるスコットランドもサイドアタッカーはウイングバックが左右に各ひとりなので、そこで数的不利に陥ることはなかったが、右からの攻撃機会は左からに比べて圧倒的に少なかった。ムシアラとビルツが左サイドで重なるように構えるシーンも、しばしばあった。

 ドイツ代表での過去のプレー、バイエルンでのプレーぶりを照らし合わせれば、ムシアラが自由に動き回りたがる理由がわかった。単に右にいたくないのだ。右に適性がないからである。一方、売り出し中のビルツは、右より断然、左がいい。ふたりを同時に使い、ギュンドアンを1トップ下で起用すれば、ムシアラは右に押し出される。だが、ムシアラはそこにいたくない。

 そういう、ある意味で身勝手な振る舞いが許されるだけの力を、ムシアラがここ1、2年でつけたことも事実である。実際、この試合でも、ボール保持者として断然、光り輝いたのはムシアラだった。採点すれば7.5以上は出したくなるプレーだった。

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