バルサはなぜ朝令暮改を繰り返すのか シャビ監督解任の顛末を歴史からひもとく (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 一方でデコは、「今も恨みを抱いていてシャビを更迭した」とも囁かされる。かつてグアルディオラはバルサ監督就任の条件に「デコの契約解除」を求め、デコは戦力外を通告されている。そこで体制刷新を求め、「グアルディオラの後継者シャビに対し、時を経て復讐を遂げた」という根拠のない噂話も流れる。感情が根っこにあるバルサだからこそ、完全否定できない話だ。

 解任されたシャビは、ラポルタ会長、デコとフィーリングでわかり合えなかったのだろう。

 シャビはCLのPSG戦で退場したロナウド・アラウホを見限って、放出候補に入れていようだが、フロントには受け入れられなかったと言われる。ラポルタ会長の「肝いり」と言われたジョアン・フェリックスを押しつけられたことにも辟易していた。一方で、マルティン・スビメンディ(レアル・ソシエダ)などリクエストした選手を獲得してもらえず、別の選手の提示に不満をためていた。

 感情のもつれは限界を超え、決裂は運命だったのだろう。シャビが今回の結末を避けるには、絶対的な結果を叩き出すしかなかった。

 2019-20シーズンにバイエルンを率いたフリックは、CL準々決勝でバルサを合計スコア8-2と木端微塵にしている。言わば、"メッシの時代"を終焉させた張本人である。ドイツ人指揮官は、新時代を作り出せるだろうか。

 シャビが監督に就任した時より、状況はマシかもしれない。地ならしはできている。ラミン・ヤマル、パウ・クバルシ、フェルミン・ロペスなど、若手をうまく登用できたら――。

 だがそこにも必ず、制御不能な感情が入り乱れるはずだ。

プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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