長谷部誠の活躍が「日本サッカーの流れをつくった」 福田正博が欧州サッカー今季の日本人選手を総括 (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro

【リバプールの環境に適応した遠藤航】

 遠藤航(リバプール)に関して言えば、ボール奪取能力やゴール前への攻撃参加の面はプレミアリーグでも通じるとは思っていたが、ユルゲン・クロップ監督の特殊なサッカーで攻守の要を務めるのは時間を要すると見ていた。それでも昨年12月頃からスタメンに名を連ねると、チームに欠かせない選手のひとりに数えられるまでになった。

 この背景として見落としてもらいたくないのは、遠藤が練習など試合以外のチームとしての時間に、監督やチームメイトとコミュニケーションを重ねたことだ。チームにフィットできるか否かを決めるのは、試合に向かうまでの時間にある。遠藤はこの時間を大切にし、環境にアジャストする努力ができるからこそ、試合で結果を残しながら、チームからの信頼を積み上げていくことができたのだ。

 リバプールは今季限りでクロップ監督が退任し、来シーズンは今季フェイエノールトを率いたアルネ・スロット監督が就任する。遠藤の去就がどうなるかわからないが、今季のパフォーマンスを見れば、遠藤を欲しがるクラブは多いだろう。年齢的に若いとは言えないが、いま計算できる戦力が必要なチームがある限り、遠藤は来シーズンもチームや環境への高いアジャスト能力を発揮して、ピッチの中央に君臨しているはずだ。

 南野拓実(モナコ)と鎌田大地(ラツィオ)が復活を遂げたことは、今後の日本代表を考えた時には見逃せない。

 南野は、2シーズン目となったモナコで30試合9得点6アシスト。スタート時のポジションは左サイドだが、流れのなかでゴール前中央に入り、味方の選手と絡みながらゴールチャンスをつくりだした。

 鎌田もシーズン終盤に監督交代によって出番が回ってくると、水を得た魚のように躍動。イタリアでの評価を一変させた。両選手とも2026年W杯に向けて日本代表を高める実力があるだけに、来シーズンもクラブで結果を残しながら、その力を日本代表でも存分に発揮してもらいたい。

 ここに挙げた選手以外でも、今季の結果を踏まえてステップアップの移籍を目指せる日本選手たちは多い。彼らがどんなクラブへ移籍するのか。そうした動向を含め、早くも来シーズンへの興味は尽きない。

プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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