上田綺世が熱弁「プロに個を伸ばす監督は存在しない」 フェイエノールトで学んだ欧州サッカーの哲学 (3ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru

【プロは監督の求めることに応えること】

 欧州では、監督から『形』を求められてしまう。『自分がやりたいプレー』より『監督のイメージすること』をまずやって、そのうえに自分の武器、自分のクオリティーが乗っかっていく。

 日本では『攻撃はアイデア』みたいに臨機応変な感覚ですが、欧州では『こういうボールを受けろ』『ここで中に出せ』と言われて、そこから前を向いてシュートを打って決められるのか、ボールを受けるところまで行くのか、もはやボールを受けることすらできないのか──と求められることのなかで、個のクオリティーの差が出る。

『90分間、全部スプリントして動け』と言われたら『いや、無理だろ』と思っても、スプリントすることに挑戦しないといけない。だって、そこに挑戦している選手がいたら、その選手のほうが成長できるし、価値があって試合に出られる。結局、割りきって受け入れて、そこに近づく挑戦をしないと成長もできない。だから日本から欧州の環境に来て、結果を残すのは難しい」

 セルクル・ブルージュの経験があったから、フェイエノールトでスロット監督から求められた要求を理不尽と捉えることなく、上田は課題として取り組むことができた。そして監督の要求に応える努力をすることで、上田の個のチカラが引き上げられていった。

「アルネ(スロット監督)から高いことを求められても、自分が努力しなければ置いていかれてしまい、彼から必要とされなくなってしまうし、フェイエノールトに居続けるレベルの選手でなくなる。アルネの要求に達してなければ危機感を感じ、筋トレ・強度・技術なのか人によって違うと思いますが、自分で取り組む。

 フェイエノールトには、成長をサポートしてくれるスタッフがいる。だから『監督が個を伸ばす』というよりも、監督が求めることを選手がどういうふうに捉えて、どういうふうにアプローチするかで個が伸びる。

 高体連でもユースでも、選手を人間として成長させるのが『育成』だと思うんです。しかし、プロはあくまで監督の求めることに応えることで、選手が成長してクラブに利益を与えることが求められ、それが選手の価値になると思います。

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