上田綺世が熱弁「プロに個を伸ばす監督は存在しない」 フェイエノールトで学んだ欧州サッカーの哲学 (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru

【「ベルギー時代の理不尽」を乗り越えて】

「アジアでの戦いに関してはそうですね。ビルドアップの仕方など、サッカーのスタイルが代表とフェイエノールトとでは違いますから、全部とまでは言いませんが。今シーズン(フェイエノールトで控えが続いて)試合に出られないなかでも、プレーの幅を広げることは意識して取り組んできました。それは違う環境に行った時に、必ず生きてくると思います」

 要はスロット監督によって、上田は"個のチカラ"が伸びたのだ──。私はそう解釈した。なにせスロット監督は、オランダで個のチカラを伸ばすことに定評がある。しかし、上田の考えは違った。

「僕はプロの世界で『個を伸ばす監督は存在しない』と思っている」

 そういう考え方も確かにある。プロは個として出来上がった選手たちの集団。監督はその個のチカラを最大限に引き出すのが役割だ。

「いや、出来上がっているというよりも、選手は監督からプレーの内容と結果を求められるから、その要求に応えられるように練習しないといけないし、トライしないといけない。選手が成長できるかどうか、それは監督から求められることに対しての向き合い方とか、そこへのアプローチで変わってくると思うんです。

 高いことを求められる環境と、そこに対するメンタリティーが備わっていれば、どの選手も自ずと成長せざるを得ない。成長しない選手は結局、置いていかれる。

 これはベルギーの頃から言ってますけど、理不尽だと思うことを監督から求められても『これは無理だ』と、自分のできる範囲内でサボったらそれまで。求められた以上は監督の求めるラインに近づこうと努力することで、自身のプレー強度の向上や選手としての価値向上につながると思うんです」

『ベルギー時代の理不尽』とは、昨季セルクル・ブルージュで2列目での起用など、ストライカー以外のポジションでプレーしたことだろうか?

「いや、全部ですよ。だって、日本で積み重ねてきたことがなくなってしまう。鹿島で2年活躍してからJのクラブに移籍したら、『上田綺世』という名前があって、どんな選手なのかも知っていて、リスペクトされてプレーできる。しかし欧州に来たら、ほぼ無名の存在からもう1回スタートして、自分の能力や特徴を認められて、やっと試合に出られる。

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