レアルの強さを再認識したCL準決勝 引いて構えて攻めさせて、逆転されても慌てない (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【ヴィニシウスのカリスマ性】

 ところが、2-1とされても、レアル・マドリードは慌てない。1点差ならば逆転できると、自分たちが内蔵するしぶとさに対する自負心がそうさせていたのだろうか。リスクを冒してまで同点弾を狙いにいこうとしないレアル・マドリードを見ていると、試合はこのまま第2戦に持ち越されるかに思えた。

 だが、もちろんレアル・マドリードにも個人技に優れた選手はいた。先制点のシーンでは霞んで見えたヴィニシウスだ。サネやムシアラもすごいが、このブラジル人選手はその上を行く存在かもしれない。

 左ウイングのポジションで、右CBアントニオ・リュディガー(ドイツ代表)から対角線パスを受けた後だった。ヴィニシウスはクネクネとした、なんとも言えないドリブルでペナルティエリア付近に侵入すると、切り返しを入れながら前方のロドリゴ(ブラジル代表)に縦パスを差し込んだ。ヴィニシウスのマークについていたサネの寄せが甘かったことも確かだが、それを寄せつけないヴィニシウスの圧倒的なカリスマ性が光ったシーンでもあった。

 次の瞬間、ロドリゴはキム・ミンジェに倒されていた。判定はPK。キッカーのヴィニシウスは、これを楽々と決め試合を2-2とした。

 第1戦という準決勝の前半部だけで、これだけの充実ぶりだ。第2戦に期待は募る。優位なのは第2戦をホームで戦うレアル・マドリードだろう。バイエルンの対抗手段は、やはりサネ、ムシアラらの個人の力になる。一方のレアル・マドリードにも、ヴィニシウスというそれ以上の選手が控える。

 問題は、これまでヴィニシウスとともにチームを牽引してきたジュード・ベリンガム(イングランド代表)が、この第1戦では大した活躍ができなかったことにある。看板選手であるにもかかわらず、後半30分、ピッチを後にしている。この影響はどう出るか。

 それにしてもクロースのスルーパスには恐れ入った。この10年強の間、ドイツサッカーの象徴として活躍してきた、元バイエルンの選手でもあるクロースが、古巣の心臓をえぐるようなラストパスを送る姿を見て、なんとも言えぬ物語性を覚えずにはいられなかった。

 今年6月に開催されるユーロで、ドイツ代表への復帰も噂されるクロースも、第2戦を占う上でのキープレーヤーになる。ブックメーカー各社は、レアル・マドリード有利と予想するが、結果はいかに。

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プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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