レアルの強さを再認識したCL準決勝 引いて構えて攻めさせて、逆転されても慌てない (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【個人技が光ったバイエルンの得点】

 レアル・マドリードが初めてバイエルン陣内でボールを長い時間つなぐことができたのは、開始から17分も経過した後だった。

 それまでを0-0で切り抜けた力。それを前提に自らのプランを押し進めようとするレアル・マドリードの、どこか厚かましい姿勢には恐れいる。

 先制点は前半24分、マークしたのはレアル・マドリードだった。バイエルンのCBキム・ミンジェ(韓国代表)とエリック・ダイアー(イングランド代表)の間を突くように、トニ・クロース(ドイツ代表)が、ハーフウェイラインを少し越えたあたりから差し込むように送ったスルーパスが見事だった。

 スルーパスは数あるパスのなかでも花形の、お洒落なパスと位置づけられるが、クロースが得点者となったヴィニシウス・ジュニオール(ブラジル代表)に出したパスは、天下一品と言いたくなる切れ味だった。得点者が霞むような、お洒落極まりない凄ワザと言えた。

 もちろん、このまま終われば名勝負にはならない。バイエルンもしっかりと反撃する。次第に再びレアル・マドリードを押し込む展開になっていく。同点弾が生まれたのは後半8分で、右45度からサネが自慢の左足を渾身の力で振り抜いたスーパーゴールだった。

 レアル・マドリードからすれば、高い個人の能力にこじ開けられたという感触だろう。「サネの左足はすごい!」で片付けられるゴールとも言えたが、その3分後、今度はジャマル・ムシアラ(ドイツ代表)にドリブルで割られると、右SBルーカス・バスケス(元スペイン代表)がたまらず足を掛け、PKを献上する。

 これをハリー・ケイン(イングランド代表)が決め、バイエルンは2-1と逆転に成功した。この2点目も、言ってみればムシアラの個人技だ。高い個人能力を最大限に発揮されると、レアル・マドリードといえども失点する。チームワークに優れたレアル・マドリードをバイエルンが個々の個人技でいかに崩すか。展開はそんな感じになりかけていた。

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