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久保建英の前に厳然とした実力差 CLベスト8進出チームはどこが違うのか (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【ヴィニシウスとベリンガムでも足りない?】

 後半20分、カウンターからベリンガムが中央をドリブルで持ち上がる。ヴィニシウスはその左サイドを走った。その鼻先にボールを出すのかと思った瞬間だった。ヴィニシウスがゴール方向にあたる右斜め前方へとコースを急に変えた。と同時に、そこへベリンガムから縦パスが出た。これがアシストとなり、ヴィニシウスのゴールを生んだ。

 ヴィニシウスとベリンガム。前半のふたりは、まるでかつてアーセナルで名コンビと言われた、ティエリ・アンリとデニス・ベルカンプの関係に近かった。ベリンガムといえばイングランド代表や前所属のドルトムント時代は中盤の選手だった。センターハーフ系だったが、今季移籍してきたレアル・マドリードでは、主に0トップの位置でアタッカー然と構える。カリム・ベンゼマの穴を埋めている。自らの商品価値を大幅に上げている。

 ベンゼマとヴィニシウスも名コンビだった。2021-22シーズンのCL優勝は彼らのコンビネーションなしにはあり得なかった。それがいまベリンガムとヴィニシウスに変わった。CL優勝を狙えるレベルにあると言いたいが、世の中は絶えず進歩している。2年前はそれでよかったが、現在はそれでは物足りなく映る。通算スコア6-2コペンハーゲンに勝利したマンチェスター・シティの戦いぶりを見るとなおさらそう思う。

 ふたりでは足りない。強力なアタッカーがもう一枚欲しい。とりわけ右からの攻撃に弱さを感じる。ライプツィヒに苦戦した理由だ。

 マンチェスタ?・シティは2戦とも失点を許している。ホームで行なわれた第2戦でもコペンハーゲンに真ん中をきれいに割られている。それは欧州各地のレベルが上がっていると考えるべきだろう。

 かつてのコペンハーゲン(たとえば中村俊輔が所属したセルティックとグループリーグで同居した2006-07シーズン当時)より、数段レベルは高かった。

 優勝候補の本命とされるマンチェスター・シティでも0点で守りきれなくなっている。欧州サッカーは、選手の技量アップにともない、攻撃能力がディフェンス力を上回る状態にある。いくら守りを固めてもこじ開けられる。エムバペ、ヴィニシウス、ベリンガム、バイエルンでいえばハリー・ケイン、マンチェスター・シティでいえばアーリング・ハーランド......この日勝ち抜けたチームを見渡しても、アタッカー陣に豪華な顔ぶれが並ぶ。

 ますます守り倒せない時代を迎えている。例外はインテルぐらいか。ラウンド16の戦いを見ていると、サッカーが競技として進化していることを再確認させられるである。守り勝つチームではなく、打ち勝つチームに幸運の女神は微笑むと見る。

「UEFAチャンピオンズリーグ」ベスト16がスタート
久保建英擁するR・ソシエダはPSGと対戦
「UEFAヨーロッパリーグ」では三笘薫、遠藤航らが出場

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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