ブラジル人記者が嘆く「サッカー王国」の没落 五輪予選敗退は氷山の一角にすぎない
2016年リオオリンピック、2021年の東京オリンピックを連覇していたブラジルが、エッフェル塔を見ることなく南米予選でその姿を消した。チームにはレアル・マドリードが数年前からとんでもない額で"予約"しているエンドリックもいたが、どうすることもできなかった。
しかし、これはすべてのカテゴリーのブラジル代表が抱える問題の氷山の一角にすぎない。
アルゼンチンに敗れ、パリ五輪出場を逃したU-23ブラジル代表photo by AP/AFLOこの記事に関連する写真を見る ブラジルで不調なのは残念ながらオリンピック代表だけではない。女子代表は先日のW杯でグループリーグ敗退を喫し、U-20代表はU-20W杯初出場のイスラエルに敗れ、U-17代表もU-17W杯準々決勝で宿敵アルゼンチンに敗れている。
A代表に至っては20年以上W杯優勝から遠ざかり、現在進められている2026年W杯予選では現在6位。このまま行けば予選突破にも黄色の信号がともる。それも32チーム制ではなく48チーム制、つまり南米では10チーム中6~7チームが出場できるというなかでの出来事なのだから、これは恥ずべき事態と言っていいだろう。ブラジルはその歴史のなかでも現在、最弱の状態かもしれない。
ブラジルは自他ともに認める「サッカー王国」だ。しかし、それが幻になりつつある。いやこの「サッカー王国」という意識こそが、ブラジルの弱体化に拍車をかけてきたのではないのかとさえ、筆者は疑っている。
そもそもなぜブラジルはサッカー大国と思われるようになったのか。それは遠いペレの時代1958年、62年、70年と、W杯で優勝を続けたことから始まる。
ちなみに66年大会においては、ピッチに入りさえすれば勝てるだろうと高をくくり、真面目に準備せずにグループリーグで敗退したが、まだすぐに方向修正できる力があった。おかげで70年のセレソンは、W杯史上最高のチームであったとFIFAが認めたぐらいのすごいチームだった。70年大会で優勝回数も他国をつき離し、ここに「サッカー王国」のイメージが確定した。
しかし、この黄金時代が終わった1974年から、ブラジルの問題の芽は育ち始めたと私は思っている。このあとブラジルは94年までの20年間、タイトルから遠ざかることになる。
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