久保建英は躍動もスペイン初戴冠ならず レアル・ソシエダはなぜ勝てなくなったのか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 2月27日、スペイン国王杯準決勝セカンドレグ、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は本拠地にマジョルカを迎え撃った。ファーストレグはスコアレスドロー、この日も1-1で決着をつけることができず、PK戦で4-5と敗退している。

 右アタッカーで先発した久保建英は、攻撃のエースとして健闘した。相手のハンドを誘発し、PKを奪ったが、味方があえなく失敗。必死にマークに来たホセ・マヌエル・コペテのイエローカードも誘った。後半、ミケル・オヤルサバルの貴重な同点弾の起点にもなっている。延長戦に入っても躍動し、ハウメ・コスタを途中交代に追い込むなど、オフェンスをけん引していた。

「個の局面からバランスを崩そうとし、引っ張ってきたコペテのイエローを誘うなどしたが、最後のペダルを踏めなかった。終盤になっても力を漲らせてプレーしていたが......」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』は、チームの敗北のなかで久保には及第点を与えていた。

 元日本代表監督であるマジョルカの指揮官ハビエル・アギーレが作り出した守備戦術は、実に老獪だった。面白味には欠けたが、現実的で「久保対策」を講じていただけでなく、他のアタッカーの持ち味も完全に封じていた。「三笘の1ミリ」を思い出させるようなゴールライン上のクリアもあり、物議を醸すことになったが、勝てば官軍だ。

 久保はスペインで初の戴冠への夢を、かつての古巣に阻まれることになった――。

スペイン国王杯準決勝マジョルカ戦に先発、延長前半14分までプレーした久保建英(レアル・ソシエダ)photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAスペイン国王杯準決勝マジョルカ戦に先発、延長前半14分までプレーした久保建英(レアル・ソシエダ)photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAこの記事に関連する写真を見る ラ・レアルに生まれた失速感は、何もこの1試合の話ではない。直近8試合は、わずか4得点。1勝3敗4分け(国王杯セカンドレグを記録上の引き分けとした場合)で、勝ち星から見放されているのだ。

 昨年9月、サンセバスチャンを現地取材した際のひとコマだった。

 クラブハウスのカフェテリアで、スカウティングに関わるクラブ関係者と話す機会があった。あくまで世間話で、踏み込んだ話はしていない。ラ・レアルと久保の相性のよさをお互いに賛美し、明るい未来を期待するようなゆるく甘い会話だった。

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