鎌田大地にとって日本代表落ちは一発逆転のチャンス ローマ戦に向け元イタリア代表がアドバイス (3ページ目)

  • フランチェスコ・ピエトレッラ●文 text by Francesco Pietrella(『ラ・ガゼッタ・デロ・スポルト』)
  • 利根川晶子●訳 translation by Tonegawa Akiko

【サッリ信奉者からのアドバイス】

 そしてマッカローネは、サッリズムに慣れるためのヒントを教えてくれた。

「いつもプレーの先を読み、ボールを素早く出すこと。決して思考を止めてはいけない。特に私のようなアタッカーはそうだった。それがうまくできなくて、どんなに怒鳴られたことか。今でも夢に出てくるよ(笑)。あと、ミステル(監督のこと)は、我を張る人間が我慢ならない。シンプルだが、効果的なプレーを望む。

 私に監督を目指させたのは、彼の完全主義なところでもある。サッリのもとでの数年は、私のキャリアの中で最高なものだった。ピッチに出る時はいつも嬉しくて、自然と笑顔になっていた。サッカーをすることが楽しくて仕方なかった。これはサッカー選手にとって一番大事なことだと思う」

 サッリは練習に没頭することを求め、「強い耐久心を持て」と強調するという。

「彼にとってそれは根本的な物なんだ。練習中の1時間半は、すべてを頭から叩き出して、全力でプレーしないといけない。家族のことも、どんな問題も消し去って、目の前のボールだけに没入し、持てるすべてを出す。ただ、サッリは鬼軍曹というタイプじゃない。なんでも話すことができる。あの頃のエンポリは選手と監督が信頼し合ったすばらしいチームだった」

 マッカローネだけではない。2012年から2015年にエンポリに所属していた選手たち皆が、口をそろえて、サッカー人生の一番の時だったと言っている。

「サッリは『攻めながら守れ』と我々に言った。それまでこんな指示を受けたことはなかったから、最初は驚いたよ。敵へのプレッシャーはアタッカーから始まっていた。それによってエンポリという小さな地方のチームを、堂々とビッグチームと当たらせた。ナポリで2-2と互角に戦ったり、インテルを0点に抑えたこともあった。これらはすべてサッリが我々に100回繰り返させた練習のおかげだった。そのおかげで、考えるより早く、体に染みついたサッリの意図するプレーができるようになったんだ。だからこそ鎌田の覚醒は、ただ時間の問題なんだと言いたい。外から来る選手は、その目覚めの時が来るのを期待される」

 マッカローネだけでなく、誰に聞いても「時間がカギ」と言うのは変わらない。ただし、あまり悠長に構えていられないのが現実だ。ボールは今、鎌田の足元にある。1月10日のローマ戦は一発逆転の最大のチャンスとなる。

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