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「FIFAウイルス」蔓延で日本代表以外でも被害者続々 現代サッカー界の病巣と「拝金主義」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 欧州のトップクラブは人気も高いだけに、プレシーズンに行なうワールドツアーが利益を生む。興行優先で、必然的に選手の調整は困難になる。

 なかでもスペインフットボール連盟は露骨である。スペインスーパーカップを2029年1月までサウジアラビアで開催する契約にサイン。3億ユーロ(約480億円)とも言われる大金と引き換えに、選手やサポーターは置き去りにした。国内のシーズン前哨戦を、シーズン中に中東遠征で行なうという珍妙さで、これぞ拝金主義の極みだろう。

 また、サウジアラビアは国全体で各国スター選手を大金でかき集めている。圧倒的なオイルマネーでバブル化し、人権侵害などの悪評が広がるのを避けるため、スポーツ洗浄(スポーツウォッシング)する狙いが透けて見える。大枚を叩いて、CL参加も画策しているという。中国スーパーリーグと同じく、一部選手が恩恵を得るだけで終わりそうだが......。

 もはや世界のサッカー界全体がカネにまみれている状態だ。

 W杯アジア2次予選のシリア対日本は国内で放映されず、有料動画の配信もなかった。数億円とも言われる放映権を吹っ掛けられたという。

「相場を崩すべきではない」と、日本サッカー協会は、暴利をむさぼろうとするシリア側の要求を突っぱねたようだが、中東の地で戦った選手たちこそ、最大の被害者だった。

 このような"ぼったくり交渉"は、今後もあとを絶たないだろう。世界中が「サッカーは儲かる」という錯覚を起こしてしまったからだ。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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