「FIFAウイルス」蔓延で日本代表以外でも被害者続々 現代サッカー界の病巣と「拝金主義」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【肥大化する大会、増加する試合出場】

 サッカー界は過去30年、拝金主義で"太り"続けてきた。

 1982年スペインW杯で、それまで参加16カ国だった出場国は24に増えたが、当時のFIFAはまだ牧歌的だった。UEFAの現行のチャンピオンズリーグ(CL)も、80年代はチャンピオンズカップで、各国の優勝クラブだけがトーナメントで勝ち上がっていた。試合数は限られ、健全な形だった。

 ところが90年代に入り、FIFAとUEFAは争うように試合数を増やし、その"競争"が狂騒的に過密日程を作り出した。

 1992-93シーズン、UEFAはリーグ戦方式を導入し、CLをスタート。1997-98シーズンには、UEFAランキング上位国から複数のクラブが出場できるようになって、肥大化する基礎になった。一方でFIFAは「サッカー不毛の地」を開拓するため1994年アメリカW杯を開催し、市場を広げる。そして1998年フランスW杯からは32カ国が出場するようになった。

 UEFAはさらにカネを動かすため、ヨーロッパリーグを拡大し、カンファレンスリーグまで創設した。極めつけはネーションズリーグで、欧州の代表チームを常に戦わせるようになったのである。FIFAも負けていない。W杯の肥大化だけでは飽き足らず、クラブレベルでも欧州と南米の対戦だったインターコンチネンタルカップを、クラブW杯へと肥大化させ、中東やアフリカに"カネのなる木"を探した。

 CLは来季から36カ国出場と、規模は膨らみ続ける。W杯も2026年からは48カ国に拡大。すでに現場は限界を超え、ひずみが見える。

 90年代までの選手と比べて、現代のトッププレーヤーは2倍近く試合に出場しているという。「昔の選手もやっていた」という意見は、実情を理解していない。「年間で50試合が限界」と言われるが、2020-21シーズンのペドリ(バルセロナ、スペイン代表)は60試合以上も出場し、現在に至ってもケガを引きずる状態だ。

「選手にとってクレイジー」

 多くの関係者が警鐘を鳴らすが、この流れは止まらない。問題はFIFAやUEFAにとどまらない。

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