久保建英の同僚5人がスペイン代表で躍動 レアル・ソシエダ色濃いチームは「無敵艦隊」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【奇策を一掃、若手が次々に台頭】

 日本戦のスペインは1000本以上のパスをつなげ、ボール支配率は80%を超えたが、ネガティブな面が出た。ボールをつなげることに固執してプレスをはめられたGKウナイ・シモンのキックがずれ、堂安律の一撃を食らった。同点にされたショックが覚めないうちに波状攻撃を受けると、「三笘の1ミリ」で田中碧に逆転弾を叩き込まれた。

 モロッコ戦もパス1000本と圧倒的ボール支配率を誇ったが、PK戦に持ち込まれて敗退したのだ。

<極端さ>

 それがスペイン代表の足枷になったと言えるだろう。

 そこで新任のルイス・デ・ラ・フエンテ監督は、平凡なほどに当たり前のことに取り組み、正常化を図っている。たとえば、GKに対する「(ロングボールを)蹴るな」という厳命を撤回。また、ルイス・エンリケは右利きセンターバックで目ぼしい選手がいなかったことから、つなぎはフランツ・ベッケンバウアー級だがディフェンスに弱さのあるエリク・ガルシアを重用。さらにアンカーとして世界最高峰で、本人もセンターバックを嫌がったロドリをコンバートしたが、そうした奇策を一掃した。

 状態のいい選手がシンプルに代表に選ばれるようになったのだ。

 フランス生まれのセンターバック、ロベルト・ル・ノルマンはまさに典型だろう。ラ・レアルで定位置を確保し、攻撃的仕組みのなかで技術を洗練させた。もともとはマークした相手に食らいつくスタイルで、ルイス・エンリケ時代だったら代表入りはなかっただろう。しかしスペイン国籍を取得してスペイン代表入りすると、右センターバックの定位置を確立しつつある。

 今のスペインは再び「無敵艦隊」の称号が授けられようとしている。今年6月にはネーションズリーグでイタリア、クロアチアを下して戴冠。冒頭で伝えたように、EURO出場も決めている。

 デ・ラ・フエンテ監督は育成畑の指導者で、ユース年代で今の代表選手を率いたのもアドバンテージと言える。今年6月のU-21欧州選手権で準優勝したように、次世代は恵まれている。そこに出場していないパリ五輪世代だけで、ペドリ、ガビ、アレックス・バルデ、フェルミン・ロペス(以上バルセロナ)、ニコ・ウィリアムス(アスレティック・ビルバオ)、アンス・ファティ(ブライトン)など、錚々たるメンバーだ。

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