旗手怜央が語るゴール量産の古橋亨梧のすごさ 「年間最優秀選手には悔しさも覚えた」 (3ページ目)

  • text by Harada Daisuke
  • photo by Getty Images

【密集でもターンして前を向くプレーに手応え】

 個人的にはチーム内の競争に打ち勝ち、常に出場機会を得られたのも自信になった。同じ中盤のポジションを争ってきたのは、カラム・マグレガーであり、マット・オライリーであり、アーロン・ムーイだった。

 マクレガーはチームのキャプテンであり、スコットランド代表。ムーイもオーストラリア代表で、オライリーは22歳と自分よりも年齢が若く、勢いがあった。そうした選手たちとポジションを争う日々は、自分自身、かなりの労力を要していただけに、試合に出場し続けられたことに確かな手応えを感じられた。

 またプレーにおいては、人が密集している状況でもターンをして前を向けるようになったことで、プレーの選択肢が大きく広がった。

 実は川崎時代は、このターンがスムーズにできずに苦労したし、何度も繰り返し練習していた。当時は4-3-3の左サイドでプレーしていたけど、前を向く時に、右足でトラップして前を向くのと、左足でトラップして前を向くのとでは、見える幅や広がる景色が全く違っていた。

 逆サイドまで見渡すには、左足でボールを触ってターンしなければならなかったが、いつも右足でターンしてしまっていたため、(川崎の)吉田勇樹コーチから映像を見させられては、「この場面は反対側にターンしたいよね」と、何度も言われていた。そのプレーを克服、改善しようと、吉田コーチや戸田(光洋)コーチに何度も居残り練習に付き合ってもらったのを思い出す。

 セルティックに加入してからも、適切にターンして前を向くのをずっと意識して取り組んできたことでプレーが改善され、今季は自分でも実感できるくらいできるようになった。

 亨梧くんも、(前田)大然もスピードを持ち味とするストライカーたち。その彼らが動き出したタイミングで、素早くパスを出すために努力してきたプレーが、自分のものとなった結果、11アシストという数字として大きく表れた。

 また、亨梧くんは得点王に輝いただけでなく、スコティッシュ・プレミアシップの年間最優秀選手にも選ばれた。同じ日本人選手として誇らしく感じる一方で、悔しさも覚えた。自分ももっと頑張れば、その栄誉に手が届いたのではないか。喜ばしいと思う一方で、率直にそう感じている自分がいた。

 きっと、この悔しさが自分をさらに成長させてくれる意欲につながる。だから、この素直な気持ちに目を背けることなく、これからもこの思いを大切にしていきたい。

旗手怜央 
はたて・れお/1997年11月21日生まれ。三重県鈴鹿市出身。静岡学園高校、順天堂大学を経て、2020年に川崎フロンターレ入り。FWから中盤、サイドバックも務めるなど幅広い活躍でチームのリーグ2連覇に貢献。2021年シーズンはJリーグベストイレブンに選ばれた。またU-24日本代表として東京オリンピックにも出場。2022年3月のカタールW杯アジア最終予選ベトナム戦で、A代表デビューも果たした。2022年1月より、活躍の場をスコットランドのセルティックに移して奮闘中。

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