旗手怜央が初めて経験した1カ月以上の戦線離脱の心境を語る 「いつも以上にサッカーの試合を見て、いつも以上に本を読んだ」 (3ページ目)

  • text by Harada Daisuke
  • photo by Getty Images

【カップ戦の重要な一戦が復帰戦に】

 一発勝負のカップ戦準決勝で、しかも相手はライバルのレンジャーズ。アンジェさん(アンジェ・ポステコグルー監督)が、ケガから復帰したばかりの自分を先発に指名してくれた事実に、ここまで自分がピッチで示してきた働きが、信頼の証になっていると感じることができた。監督がそうした判断で背中を押してくれただけに、自分も自信を持って、また過度な緊張をせずに試合に臨めた。

 それを試合勘と呼ぶのだろうか。復帰初戦から大一番というのもあって、プレーはいつもどおりとはいかない難しさがあった。ただし、チームのために、その時の自分にできる最善を尽くした。

 プレーの感覚がつかめず、攻撃面でチームに貢献できないのであれば、ハードワークによって守備で力を発揮する。相手にプレスを掛けて誘導、もしくは追い込む。セカンドボールを拾って攻撃につなげる。または、ボールをキープして試合を落ち着かせる。復帰初戦で、自分の特徴や強みを出せたかと問われれば、出せたとは言い難かったが、求められている最低限の役割を果たそうと考え、そして努めた。

 何より、いい攻撃はいい守備からはじまる。試合勘が戻らずとも、ハードワークは意識すればできる。もともと自分はFWの選手だったけど、中盤でプレーする機会が増え、より守備を強く意識するようになって得た考えでもあった。

 また、いつか触れたいと思っていたけど、復帰した試合でもセルティックのサポーターは、僕のチャントを歌ってくれた。選手個人のチャントは、誰しもが作ってもらえるものではないことはわかっている。それだけに今シーズン、自分を応援するチャントを歌ってもらった時には、セルティックのサポーターに認められたと思えてうれしかった。

「ヘイ、オ〜、レ〜オ〜、ハタテ♪」

 だから、復帰したスコティッシュカップ準決勝でも、その声援に力が漲った。

 得点には絡めなかったけれど、1-0で勝利してセルティックは決勝への切符を手にすることができた。それにより国内3冠に挑戦する権利を得られたと考えると、最低限の仕事ができてよかったと思う。そして、リーグ優勝を決めた続くハーツ戦(第34節)――僕はアンジェさんの言葉により、再び自分自身のプレーにスイッチを入れた。

(連載第18回/後編「優勝を決めたハーツ戦を自己分析」>>)

旗手怜央 
はたて・れお/1997年11月21日生まれ。三重県鈴鹿市出身。静岡学園高校、順天堂大学を経て、2020年に川崎フロンターレ入り。FWから中盤、サイドバックも務めるなど幅広い活躍でチームのリーグ2連覇に貢献。2021年シーズンはJリーグベストイレブンに選ばれた。またU-24日本代表として東京オリンピックにも出場。2021年12月31日にセルティックFC移籍を発表。2022年1月より、活躍の場をスコットランドに移して奮闘中。同年3月のカタールW杯アジア最終予選ベトナム戦で、A代表デビューも果たした。

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