旗手怜央が初めて経験した1カ月以上の戦線離脱の心境を語る 「いつも以上にサッカーの試合を見て、いつも以上に本を読んだ」 (2ページ目)

  • text by Harada Daisuke
  • photo by Getty Images

【改めて自分の身体や心と向き合う時間にした】

 サッカーができない状況、試合に出られない状況に焦りはなかったと言えば、嘘になる。自身の数字にもこだわって臨んでいる今シーズン、わずかとはいえ試合を欠場すれば、その結果にも影響する。チームのためにも、自分のためにも、何もできない焦りは確かにあった。

 ただ、サッカー選手にケガはつきもの。「ケガをしてしまった事実はどうやっても変えることはできない」と、気持ちを切り替え、改めて自分の身体や心と向き合う時間にしようと考えた。

 試合に出られないため、いつも以上にサッカーの試合を見る機会を増やして、プレーのアイデアを膨らませた。また、いつも以上に本を読み、知識を蓄えようとした。

 特に、ゆっくりと読書をする時間が取れたのは、とても有意義だった。日頃は、自分の成長に生かせないかと、いわゆる自己啓発系の本を読むことが多いが、尊敬する知人に薦められ、あまり手に取ることのない小説にもチャレンジした。

 そのなかで印象に残っているのが、『運転者 未来を変える過去からの使者』(喜多川泰著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)だ。ネタバレになってしまうため、詳しくは書かないけど、運はよい悪いではなく、貯めて使うものだという表現が心に響いた。自分も運を「ここぞ!」という時に使えるように、日々の生活や練習から「運」を貯めていこうと思った。同作家の本としては、『手紙屋 〜僕の就職活動を変えた十通の手紙〜』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)も読んでいただけに、また好きな一冊が増えた。

 ほかに『夢をかなえるゾウ』(水野敬也著/文響社)も、今回のリハビリ期間中に読んだ。今シーズンはずっと試合を戦っていて、落ち着いて自分自身を振り返ることができていなかっただけに、本を通して今の自分がやるべきこと、またこれからの自分への向き合い方について、整理整頓するきっかけを与えてもらったように思っている。

 当初は4月8日のレンジャーズ戦(第31節)での復帰を目指していたが間に合わず、4月30日のスコティッシュカップ準決勝が復帰の舞台になった。対戦相手は同じくレンジャーズというのもあり、当初はいきなり先発では起用されないかもしれないと考えていた。しかし試合前日、先発するメンバーに加わり、練習したことで覚悟ができた。

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