ミラン&インテル、ヨーロッパの舞台から消える屈辱からの復活。CL準決勝で熱いダービーが帰ってきた

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 33年ぶりのリーグ優勝を果たし、ナポリの町は喜びを爆発させている。しかし北部のミラノでは、スクデット(リーグ優勝の盾)などまるで取るに足らないことのように、別の話題で持ち切りだ。

 現地の新聞にはユーロデルビー(ヨーロッパを賭けたダービー)、もしくはデルビッシモ(ダービーの中のダービー)などの文字が躍っている。ミランとインテルがヨーロッパの最高峰、チャンピオンズリーグ(CL)準決勝で対戦するのだ。両チームがぶつかる時は、いつでも町は熱くなるが、CLの勝敗がかかっている今回はさらに特別だ。バールでも職場でも学校でもトラム(路面電車)でも、「デルビー」という言葉が聞こえてくる。

 同じ地域にチームが2つあり、ダービーが戦われる町はイタリアにいくつかある。有名なのはローマ、ジェノバ、トリノ。しかし一番対戦回数が多く、伝統的にレベルの高いのがミラノのダービーだ。1990年代、セリエAの黄金時代にはまさにヨーロッパ、いや世界のサッカーの頂点を争う戦いでさえあった。

2002-03シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝のインテル対ミラン戦2002-03シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝のインテル対ミラン戦この記事に関連する写真を見る しかしその後、ミラノは苦難の時代を迎える。国内ではユベントスのひとり勝ちの時代が続き、ヨーロッパではイタリアサッカー自体のヒエラルキーが下がっていく。2015-16シーズンには、史上初めて、ヨーロッパのカップ戦からミラノの両チームが姿を消してしまった。

 リーグ戦でも中位に沈んでいたミランとインテルは、トロフィーのためではなく、プライドを保つために戦わなければならなかった。おまけにその年のCL決勝は、ミラノのサン・シーロ(スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ)で行なわれるという屈辱まで味わった。そんな辛い時代を通ってきただけに、ミラノの2チームが再びヨーロッパの重要な試合で相まみえることへの喜びは、ひとしおなのだ。

 ちなみに有名なダービーにはそれぞれ特別な呼び名がある。ローマ対ラツィオは首都ダービー、ジェノア対サンプドリアは灯台ダービー(港町ジェノバのシンボルが灯台のため)、ユベントス対トリノのモーレ・ダービー(トリノのシンボルが「モーレ・アントレリアーナ」という建物なので)そしてミラン対インテルがマドンニーナ・ダービーだ。

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