久保建英は「求めてきた自分になろうとしている」レアル戦決勝ゴールへの現地での評価 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

【厳しいディフェンスにも集中力をキープ】

 久保は現在、ボールプレーを信奉するラ・レアルで水を得た魚となっている。その運命も彼がつかんだものである。シーズン8得点は日本人選手として初の快挙で、その8試合すべてで勝利。まさに不屈のキャラクターだ。

 レアル・マドリード戦は象徴的だった。

 序盤、久保はカウンターからのドリブルで、カバーに来たスペイン代表ダニエル・カルバハルに前に入られ、ストップされる。経験の差を見せつけられたが、少しも諦めなかった。右サイドを中心にダビド・シルバとのパス交換で、ライン間にかい潜り、クロスからチャンスを演出。マークを引き寄せながら、左サイドをオープンにし、それで得たCKを自らニアに蹴り込むなど、決定機も作った。

 攻撃の起点になりかけた久保だが、今度は間合いで守る技に長けるスペイン代表ナチョに持ち味を消される。ナチョのアタッカーにアジャストする熟練のディフェンスは世界屈指で、背を受けてボールをもらったところでは、衝突するような激しさで潰された。こうした硬軟使い分けた守りをされると、次第にしぼんでしまうものだが、久保は集中力を切らさなかった。

 そして後半開始直後、味方のアレクサンダー・セルロートがエデル・ミリトンにふたをし、無理なターンで足を滑らせながらバックパスになったところ、GKの前に張っていた久保は鋭い出足で迫る。そしてひと足早くボールにコンタクトし、左足でゴールに流し込んだ。古巣レアル・マドリードへの敬意だろうか。ゴールパフォーマンスは控えめだったが、チームメイトと抱き合い喜びを爆発させていた。理性よりも本能のほうが強く出る選手だ。

 スペイン大手スポーツ紙『マルカ』は、久保のコメントを使ってこう見出しを打っている。

「マドリードに勝ったことで、自分の(得点の際の)写真がマルカの誌面を飾るだろうね。思い出に買うことにするよ!」

 サッカー界で絶対的王者になるという一種のナルシズムで、久保は"なりたい者になろうとしている"。その生き方の激しさは簡単に真似できない。だからこそ、多くの人の関心を引く。言い換えれば、それがスター性だ。

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