三笘薫のもうひとつの魅力が浮き彫りに ブライトンはFAカップ敗退も好機を演出していた (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

【呪いにかからなかったマンUの右SB】

 たいていのチームがそうであるように、マンチェスター・ユナイテッドも、ある種、変態的なそのパス回しの呪いにかかるように、ペースを乱されることになった。支配率でブライトンに上回られる不快感のようなものを最後まで漂わせながら、プレーしていた。

 だが、三笘が対峙したコンゴ出身のイングランド人の右SB、アーロン・ワンビサカは例外で、その影響を受けていなかった。三笘と1対1になっても落ち着いていた。なぜか三笘の仕掛けるモーションと波長が合っていて、逆を取ろうと試みても乗ってこない。縦を取ろうとしてもタイミングを合わせてついてくる。アワを食うことはなかった。

 となると、選択肢はカットインか、折り返しを狙い、走り込んでパスを受けるかのどちらかになる。

 開始6分。三笘がドリブルでカットインすれば、援軍として駆けつけた相手の右ウイング、フランス代表のアントニー・マルシャルに倒され、FKのチャンスを得る。あと50センチ侵入すればPKという惜しいシーンだった。

 30分にはエクアドル代表の左SBペルビス・エストゥピニャンとのコンビネーションで最深部に走り込み、マイナスの折り返しを鮮やかに決めた。

 さらにその2分後には再びカットインを試みる。ワンビサカの反則気味のタックルに潰されるも、そのこぼれ球を拾ったパラグアイ代表の19歳、フリオ・エンシーソが、あわやという際どいシュートを放ち、マンチェスター・ユナイテッドを慌てさせた。

 絶好のチャンスが巡ってきたのは後半10分。ブライトンのキャプテン、ルイス・ダンクの縦パスが左サイドを走る三笘の鼻先に送られる。併走するワンビサカに走り勝ち、優位な態勢で1対1に及んだ。縦抜けを図る絶好のチャンスだった。しかしワンビサカは、時間が経過しても三笘のリズムに波長が合っていた。タイミングよく身体を合わせ、三笘からボールを奪っていった。

 そこからしばらく、三笘にはボールが回らなくなる。後半31分にはミスも犯す。こぼれ球を拾い、ドリブルを開始した矢先、相手に引っかけられ、奪われる。ブライトンの守備陣は逆モーションとなり、ピンチを招いた。

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