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久保建英はなぜローマ戦の先発を外れたのか EL敗退のレアル・ソシエダを襲ったふたつの誤算

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 ヨーロッパリーグ・ラウンド16のセカンドレグ。レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は、イタリアの古豪ローマと本拠地で対戦し、0-0で引き分けている。ファーストレグは敵地で2-0と敗れており、大会からの敗退が決まった。

「Revulsivo」

 スペイン大手スポーツ紙『マルカ』は「クスリ」という比喩表現で、後半26分からピッチに立った久保建英のプレーを評価している。久保がチームを活性化していたことは間違いない。ファーストレグを振り返っても、十分に先発するに値した。

 では、なぜ久保は先発から外れたのか?

ローマ戦に後半26分から途中出場した久保建英(レアル・ソシエダ)ローマ戦に後半26分から途中出場した久保建英(レアル・ソシエダ)この記事に関連する写真を見る ラ・レアルの最近5試合の成績は2敗3分けだった。わずか3得点。勝ちきれない試合が続いていた。

「あと一歩まで詰め寄ったが、夢を見るにはゴールが足りなかった」
 
 ローマに敗退後、ラ・レアルのイマノル・アルグアシル監督は語っているが、そこにチームが失速した理由は濃縮されている。

 ジョゼ・モウリーニョが率いるローマ戦も、好機自体は作っていた。バリケードを作った守備戦術「バスを置く」にも対抗。左利きの多い陣容で、何度か堅陣を崩しかけていた。

 最近ケガから復帰したダビド・シルバはすでにチームのエンジンとなって、チームを走らせている。トップ下の彼がボールを触るたび、リズムが生まれた。前半からブライス・メンデス、ミケル・メリーノのチャンスを演出したシーンは「魔法使い」のようだった。

 しかし、ふたつの誤算があった。

 後半、アレクサンダー・セルロートはゴール前でフリーになってクロスを呼び込んだが、ヘディングは力みすぎて明後日の方向に飛んでしまっている。セルロートは今年1月、スペイン国王杯の準々決勝FCバルセロナ戦で決定機を外したショックからか、以来、9試合でわずか1得点。全ての大会を合わせると、ゴールはすでに二桁を突破していただけに、このスランプは大きな誤算となった。

 もうひとつの誤算が、ミケル・オヤルサバルだろう。ローマ戦で先発したが、本来の輝きは出せていない。後半、左CKから完全にフリーで右足を合わせたシーンもGKにぶつけてしまい、跳ね返りをすかさず左足で合わせたが、これもバーを直撃。ゴールを生み出すことはできなかった。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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