久保建英はなぜローマ戦の先発を外れたのか EL敗退のレアル・ソシエダを襲ったふたつの誤算 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

【パフォーマンスは落ちていない】

 オヤルサバルは前十字靭帯のケガから復帰し、そのスピリットはすばらしい。チームの絶対的エースを復活させるためにも、試合から外すわけにはいかない事情があるのだろう。彼のように才能に溢れた「生え抜きのワンクラブマン」は別格で、長いスパンで調子を取り戻させるプランもある。ただ、ELを切り取った場合、まだ先発は厳しかった。

 この日の先発落ちは、久保がずっと数字にこだわり続けていた姿と符合するものがある。

 今シーズン、久保はリーガ・エスパニョーラ開幕戦でいきなりゴールを決め、4得点5アシスト。しかし、本人は少しも満足しておらず、エスパニョール戦では相手のオウンゴールとされた1点について、審判に問い質していた。どこか数字に強迫観念を感じさせるほどだった。

 もし久保が4、5点多くを叩き込んでいたら、メンバーから外されることはなかっただろう。ストライカーも、エースも、よほどのことがない限り、外すことはできない。ダビド・シルバは復帰後も確実に調子を上げ、ローマ戦もベンチは考えられなかった。そうなると、今回のローマ戦の先発メンバーがファーストチョイスになるのだ。

 ただ、久保はバジャドリード、エスパニョール、セルタ戦と、3試合連続ゲームMVPに選出された後も、プレーレベルは落としていない。むしろ、マルティン・スビメンディと並び、最も安定したパフォーマンスを見せていた。ローマに敗れたファーストレグでさえ、評価は高かった。

 この日のローマ戦も、久保は「切り札」として存在感を示していた。左に流れ、ダビド・シルバとパス交換しながら、一気にゴール前へ迫って、あわやというチャンスを創出。右サイドからカットインし、相手を押し下げたあと、タイミングよく左足で横へ流し込み、味方にフリーのミドルをアシストしている。バルサのフランス代表ウスマン・デンベレが得意とするウィングプレーだ。

 しかし、ゴールは遠かった。終了間際には交代出場したストライカー、カルロス・フェルナンデスが退場処分に。これで万事休すだった。

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