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ブラジル代表に重大危機。次期監督は決まらず、国民は怒りを通り越して無関心に

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 ブラジル国民は怒っていた。

 カタールW杯で20年ぶりの優勝が期待されていたセレソンだが、ふたを開けてみればいいところはほとんどなし。準々決勝で早々と敗退した。ただし、怒っていたのは負けたからではない。サッカーは運もある。どんなチームでも負けることはある。ブラジル人が怒っていたのは、その負け方だった。

 カタールでのブラジル代表は、まったくもって責任感がなく、そしてとてつもなく傲慢だった。自分たちは勝てると信じ込み、どんな目立つ方法でゴールしようかと考えているうちに負けてしまった。カメルーン戦にベストメンバーを使わなかったことしかり、クロアチア戦の攻めなくてもいいシーンで飛び出していったフレッジしかり、PK戦でひとり目ではなく5人目のキッカーを望んだネイマールしかり......。たぶん全5試合を合わせても、いいプレーと言えるのは40分ぐらいだったろう。

 そして、いざ分が悪くなると途端に情緒不安定になる。PK戦の前、クロアチアはひとつに団結し、互いを鼓舞し合っていたが、ブラジルの選手たちは目を伏せ、所在なさげだった。ブラジルのレジェンド選手ジュニオールは、ブラジルは「攻められると恐怖を感じているようだ」と嘆いている。

クロアチアに敗れて立ち上がれないでいたブラジルの選手たち photo by JMPAクロアチアに敗れて立ち上がれないでいたブラジルの選手たち photo by JMPAこの記事に関連する写真を見る 責任感のなさはピッチの外でも見られた。

 たとえば大会直前までイタリアのトリノでキャンプをし、開幕2日前になってやっとカタール入りしたこと。カタールは35度の気温であるのに、アルプスに近いトリノの気温は約10度。なぜそんな気温差のある場所で準備をしたのか。おまけにこの大事な準備期間に、チームは2日の休日をとっている。ただでさえ少ない準備期間に休みをとってどうする。W杯をなめていた証拠だ。

 また、大会中に大先輩ロナウド(フェノメノ)に連れられ、皆でカタール市内の超高級ステーキ店に食べに行ったこともブラジル中から非難された。クロアチアやアルゼンチンが決勝トーナメントに向けて集中をしている時に、セレソンのメンバーは有名な塩降りシェフのレストランに行っていたのだ。金箔に包まれたステーキがウリで、お値段はひとり約2000ドル(約26万円)。

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