ブラジル代表に重大危機。次期監督は決まらず、国民は怒りを通り越して無関心に

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【一切取材を受けないチッチ監督】

 もちろん違法などではない。ただし、選手はSNSなどにあげずに、静かに食べていればよかった。その月をどうにか暮らしている人が多いブラジルで、この投稿は人々の気持ちを逆なでした。それで試合にも負けたとあっては、ブラジル人への最低のメッセージとなった。

 監督のチッチにも責任感がなかった。彼は敗退が決まると、さっさとチームを見捨てている。ピッチで選手たちが涙を流し、サポーターに頭を下げているのをしり目に、チッチはまるで別にもっと大事な用事でもあるかのように、さっさとロッカールームに帰ってしまった。

 その後、1カ月近く経つが、チッチはひとつのインタビューも受けていないし、敗退に関して何の説明もしていない。これはもう逃げているとしか思えない。本当にがっかりだ。チッチ監督はここ最近の代表監督のうちで最低と言われている。大きなことを言いながら、本気の試合が始まったとたん、すぐに負けてしまった。なにより彼のサッカーはブラジル人には退屈でたまらなかった。

 その後に起きたショッキングな出来事、偉大なペレの死、そして前大統領派の議会襲撃事件などで、ブラジル人はW杯敗退を忘れてしまった。しかし、それは決してポジティブなことではない。むしろその逆だ。正確に言えば、人々はセレソンへの怒りを忘れたのではなく、セレソン自体を忘れてしまった。W杯敗退はブラジルサッカーを埋葬する、最後のシャベルだった。

 今、ブラジル代表に苦言を言い続ける者はごく少数だ。その他大勢はもう興味さえも失ってしまったようだ。SNSでは「このセレソンは我々の代表ではない」という声も聞こえるし、信じられないことに「自分はアルゼンチン代表のファンだ」と公言する者も出てきた。ブラジルとアルゼンチンのライバル関係は根深い。20年前なら口にすることも憚れたことだろう。

 ブラジル人と代表の間には深く大きな溝ができてしまった。この溝を埋めるのは難しいだろう。より最低なことに、選手たちはそれがどんなに深刻なことか、気がついていない。彼らは全く別次元の世界で生きているのだ。

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