アルゼンチン代表の悪行をFIFAも批判。その「攻撃的な振る舞い」こそ強さの源泉でもある

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

 国際サッカー連盟(FIFA)は1月13日、カタールW杯の決勝で、アルゼンチン代表に「攻撃的な振る舞い」などがあったとして、処分の手続きを開始したと発表した。

<強豪国を見習う>

 日本サッカーはまだまだ、現在のスタンスは崩すべきではないだろう。たとえ強豪国ではないにしても、目を引く戦いをする国から何かを学び取るべきである。模倣することは、サッカーにおいては能力を引き出すことにもつながる。

 しかし、たとえばカタールW杯で優勝したアルゼンチンのような戦いはあまり参考にならない。

 カタールW杯のアルゼンチンは、初戦でサウジアラビアに1-2と黒星を喫しており、大会序盤はチームとしてうまくはいっていなかった。第2戦のメキシコ戦も、ようやく勝ちを拾った内容と言える。もし世界最高の選手であるリオネル・メッシがいなかったら、一敗地にまみれていたかもしれない。

「メキシコはボールを握って、すばらしいサッカーをしていた」

 メッシ自身がそう認めていたように、アルゼンチンは苦しんでいたのである。

 しかし、メッシの活躍で試合に勝つたびに、各選手のチューニングが合ってきた。ポーランドも下してグループリーグを勝ち上がると、不協和音さえ心を動かすメロディになる。

 決勝トーナメントに入ると、オーストラリアを2-1、オランダを2-2からのPK戦で撃破。若手ストライカーのフリアン・アルバレス、PKストッパーのエミリアーノ・マルティネスなどヒーローが生まれた。準決勝ではメッシと仲間たちが戦いを完全にアジャストさせ、クロアチアを3-0で粉砕。フランスとの決勝では、シーソーゲームの末に最後はPKで決着をつけ、メッシがトロフィーを天高く掲げた。

 メッシ・アルゼンチンの優勝は、最高に美しいシナリオだった。しかし、勝者にふさわしかったかどうかは、今も大いに議論の的になっている。

 たとえばオランダ戦は、"戦闘"のボルテージが最高潮に達した結果のラフプレーだったとは言え、煽りに対する反発としては度が過ぎていた。相手を削り倒し、ボールを敵ベンチに蹴り込むなどは、「文脈」などと関係なくアウトである。また、PK戦で勝利した瞬間には、オランダの選手に対し、多くのアルゼンチン人選手がバカにするような顔を向けていた。

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