レフェリー視点で面白かったカタールW杯の3試合。家本政明が「一番笛を吹いてみたかった」と思ったゲームは? (4ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

【日本人もW杯で笛を吹くチャンスはある】

 今大会はアジアの躍進が目立ち、拮抗した試合が多かったのでフットボールファンとして過去最高に面白かった大会でした。ただ、日本人の山下良美さんが第4審判員として参加しましたが、主審という意味ではブラジル大会の西村雄一さん以降、W杯で日本人レフェリーは笛を吹いていません。

 それでもカタールW杯での基本に忠実なレフェリングは、日本人に有利な傾向になってきていると思います。動きの量と質、丁寧さや基準の一貫性は日本人が劣っているとは思いません。

 ですから今の若いレフェリーは世界の最新のトレンドや方向感、求められているものをしっかりと理解してトライすれば、W杯で笛を吹くチャンスは大いにあると思います。

 そのためには、繰り返しますがレフェリーの"力"の部分をどう身につけるか。Jリーグではよくないものとされてしまいがちですが、海外では必須の要素になります。それと言語能力とプレゼンス。ここの課題をクリアできれば、世界のトップに行ける可能性は十分に見込めると思っています。

 現状では日本人レフェリーが欧州のリーグで笛を吹く機会が、仕組みとしてないので難しいところがあります。過去には各国間や各リーグ間で提携をして、レフェリーの交換という形でやったことはあります。

 今後は日本サッカー協会とJリーグが本腰を入れて戦略的に欧州や南米のリーグとパートナーシップを結んで、日本人レフェリーが笛を吹ける機会を創出できたらいいなと。今後、レフェリーの側面でもそうした世界戦略を日本サッカー協会とJリーグに期待したいと思います。

家本政明 
いえもと・まさあき/1973年6月13日生まれ。広島県福山市出身。2002年からJ2、2004年からはJ1で主審を務め、2005年からはJFAのスペシャルレフェリーとなり国際審判員も務めた。2021年にJリーグの最多担当試合数を更新し、同年シーズンを最後にレフェリーを引退。現在はJリーグに入り、リーグの魅力向上の活動をするほか、さまざまなメディアに出演。レフェリー視点から語るサッカーが人気だ。

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