アフリカ勢に希望を与えたモロッコ。「だが、まだ何も変わってはいない」と指揮官が語る理由 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by JMPA

 翻(ひるがえ)って、再びモロッコである。

 アフリカ勢史上初のベスト4進出は快挙と呼ぶにふさわしい。アフリカの国々に希望を与える4位。そう言っても過言ではないだろう。

 しかし、レグラギ監督は、「これまではグループリーグ突破が夢だったが、今はセミファイナリストになった。だが、まだ何も変わってはいない」と、現実を見据える。

「(2010年大会の)ガーナも、(2002年大会の)セネガルも、(1990年大会の)カメルーンもベスト8を超えられなかったが、ようやくモロッコが準決勝にたどり着けた。多くの経験を積んで、いつかアフリカの国がワールドカップを勝つ日がやってくる。一歩一歩徐々に強くなるものなんだ」

 レグラギ監督は試合直後、熱くなってレフェリーに詰め寄る選手たちを自ら制し、落ち着かせるべく声をかけた。そんな振る舞い同様、アフリカの未来を見る目も冷静だった。

 熱く戦う選手たちと、それを冷静に見守る指揮官。モロッコ躍進の秘密を見たような気がした。

【著者プロフィール】浅田真樹(あさだ・まさき)
フリーライター。1967生まれ、新潟県出身。サッカーのW杯取材は1994年アメリカ大会以来、2022年カタール大会で8回目。夏季五輪取材は1996年アトランタ大会以来、2020年東京大会で7回目。その他、育成年代の大会でも、U-20W杯は9大会、U-17W杯は8大会を取材している。現在、webスポルティーバをはじめとするウェブサイトの他、スポーツ総合誌、サッカー専門誌などに寄稿している。

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