検索

アフリカ勢に希望を与えたモロッコ。「だが、まだ何も変わってはいない」と指揮官が語る理由 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by JMPA

 結果だけではない。スペイン戦では守備を固めてのカウンター狙いに徹してはいたが、ポルトガル戦、フランス戦ではボールを保持する時間も長く、組織的に相手の守備を崩していく攻撃力の高さも目を引いた。しかも、試合に応じて戦い方は変化させつつ、勇猛果敢にボールへと向かっていく姿勢だけは変わらない。だからこそ、モロッコの試合を見た多くのファンが、彼らのサッカーに魅せられたのだろう。

 こうなると、次回大会以降に期待が高まるのは、アフリカ勢のワールドカップ初制覇である。

 もはやそれも夢物語ではない。そんなことを想像させる。

 しかし、レグラギ監督は、安易に楽観的な言葉を口にするのを避けた。

「今大会では多くのことを学んだ。特に準決勝がそうだった」

 そう語る指揮官は、「すばらしい成果を残すことができたが、これを繰り返していかなければいけない」と語り、喜びに沸く周囲を落ち着かせるように言葉をつなぐ。

「アフリカ勢が毎回ベスト8に残れるようになれば、いつかアフリカの国がワールドカップを勝てるようになる。なぜヨーロッパ勢は強いのか。なぜ今夜(3位決定戦で)クロアチアが勝てたのか。それは経験があるからだ。だから、この試合を見た子どもたちに学んでほしい」

 そして、レグラギ監督は「フットボールDNA」という表現を用い、それが子どもたちに受け継がれていくことの重要性を説いた。

 同じことはアジア勢にも言えるのだろう。

 20年前の2002年大会では、韓国がアジア勢初のベスト4進出を果たした。自国開催のアドバンテージがあったとはいえ、過去のアジア勢の成績を考えれば、快挙という言葉では表現しきれないほどの成果である。

 だが、その後のアジア勢の成績はと言えば、ベスト4進出はおろか、ベスト8進出を果たした国さえひとつもなし。今大会でようやく史上初めて3カ国(日本、韓国、オーストラリア)が決勝トーナメント進出を果たしたという状況にある。

 アジアのレベルが上がっているのは確かでも、世界のレベルもまた上がっている。アジアと世界の差が縮まったと考えることは難しい。だからこそ、「これを繰り返していかなければいけない」のである。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る