アフリカ勢に希望を与えたモロッコ。「だが、まだ何も変わってはいない」と指揮官が語る理由

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by JMPA

 モロッコの大いなる挑戦が幕を閉じた。

 ワールドカップ3位決定戦。ともに準決勝で敗れたクロアチアとモロッコが最後の力を振り絞り、誇りと意地をかけて臨んだ一戦は、クロアチアが2-1で制した。

 互いが持ち味を発揮して攻め合った前半は、ともにセットプレーで1点を奪い合ったあと、FWミスラフ・オルシッチのゴールでクロアチアが勝ち越す白熱の展開。しかし、後半は一転、消耗しきった両チームの選手たちにはミスが目立った。オープンな展開でありながら、どちらも決定機を作れない。そんな緩みが目立つ試合内容となってしまった。

 特に1点ビハインドのモロッコは、焦りから苛立ちを見せるようになり、時間とともにプレーが雑になっていった。対するクロアチアにもミスが増え、つけ入るスキはあったはずだが、もはやそれができるほどの余力はなかったということだろう。

3位決定戦でクロアチア相手に惜しくも敗れたモロッコ3位決定戦でクロアチア相手に惜しくも敗れたモロッコこの記事に関連する写真を見る とはいえ、アフリカ勢初の4位である。今大会のモロッコが、世界に誇るべき成果を残したことは間違いない。

 モロッコ代表を率いるワリド・レグラギ監督も、「前半はゲームを支配できたが、後半はミスで問題を改善できず残念」と悔しがりながらも、「全選手を誇りに思う。結果は残念だったが、我々のサッカーに対してポジティブなイメージを持ってもらえたのではないか」と胸を張った。

 レグラギ監督の言葉を引くまでもなく、今大会のモロッコの戦いは世界中にポジティブなイメージどころか、強烈なインパクトを残すものだったと言っていい。

 グループリーグでは、前回大会3位のベルギーに2-0で勝利。同国史上2度目の決勝トーナメント進出を果たしたあとも、スペインを0-0の末にPK戦3-0で、ポルトガルを1-0でそれぞれ退け、初の準決勝進出。準決勝ではフランスに0-2で敗れはしたが、ヨーロッパの強豪を次々に下す快進撃は、世界のサッカーファンを驚かせた。

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