日本戦を前にコスタリカでは批判が噴出。国民の怒りは初戦大敗のせいだけではなかった

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 大敗したスペイン戦の後、コスタリカ代表はふたつのことに集中して取り組んでいる。

 ひとつは選手の気持ちを落ち着かせることだ。コスタリカの選手の多くは、あの試合の後、ほとんど眠れなかったという。0-7という大敗は大きなトラウマとなっている。そのため、何も世界が終わったわけではないということを、監督をはじめスタッフが選手たちにわからせるよう努力している。

 もうひとつは、代表チームへの非難から選手をできるだけ遠ざけることだ。コスタリカの国民もメディアも怒りまくっている。特にメディアは、まるで代表と戦争でもしているかのようだ。歴史的な敗北を、選手のトラウマを、人々の痛みを、そして世界的に恥をさらしたことを、毎日、語っている。代表を叩くことに熱心なあまり、次に日本戦が控えているのも忘れてしまったかのようだ。サッカー連盟は心配し、選手を守るため試合の翌日からメディアをシャットアウトしている。

 サッカー協会会長のロドルフォ・ビリャロボスは「まだ試合があるのにこんな批判をするなんて馬鹿げている。チームに悪い影響を与えるだけだ」とコメントしたが、人々の怒りは収まらない。なぜならコスタリカ代表の問題は、この試合に限ったことではなかったからだ。チーム周辺にはここまでも多くの不手際があった。0-7という結果は、悪いプレーをしたからだけではなく、そうしたことの集大成だと人々は思っているのだ。

スペインに7得点を許したケイロル・ナバス(コスタリカ代表) photo by MUTSUFOTOGRAFIAスペインに7得点を許したケイロル・ナバス(コスタリカ代表) photo by MUTSUFOTOGRAFIAこの記事に関連する写真を見る たとえばチームの要、GKのケイロル・ナバスは、パリからチームのいるクウェートに飛ぼうとしたが、チケットが間違っていたため、翌日に出直さなければならなかった。到着した時にはすでに疲れ切っていて、結局、1日半遅れで練習に加わった。準備期間の短い今回のW杯では、練習時間は1日でも貴重であるにもかかわらずだ。

 また、コスタリカはイラクでの親善試合を予定していた。ヨーロッパ組は後からチームに加わったため、大会前に全員でプレーできる試合はこのイラク戦のみ。非常に重要な試合だったが、キャンセルされた。パスポートにはイラク入国のスタンプを捺さないという約束だったが、それがイラクの入管にうまく伝わっていなかったのだ。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る