カタールW杯を前に各国代表の主力選手にもケガ人が続出。ヴィニシウス「心の疲れは目に見えない」 (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

話し合われなかった日程問題

 それにしても、こうなることは目に見えていたのに、なぜFIFAと各国サッカー協会はスケジュール問題に手を打ってこなかったのか。

 カタールW杯開催が決まったのは2010年の12月末。ぞの後何年も、暑さに対する具体的な方策は話されなかった。fFIFAは2015年になって、シーズン真っ只中の冬に開催する案を発表したが、各国リーグは始めのうち、これを受け入れない姿勢を見せた。それから話し合いが何度ももたれ、2017年にやっと合意。しかし箱を開けてみると、過酷な日程による選手たちへの影響は一切考慮なされていなかった。この2年間、彼らが話し合っていたのはただの一点についてのみ、選手ひとりにつきFIFAが協力金をいくら出すかだ。

 この協力金はクラブ・ベネフィット・プログラムと呼ばれ、FIFAが選手を拘束した日数(W杯期間中や公式準備期間)に応じて各クラブに支払われる。前回の2018年は選手ひとりあたり1日8500ドルだったが、今回は1万ドル(約145万円)が支払われる。所属する選手の代表チームが決勝まで勝ち進んだ場合、クラブが受け取れる最高額はひとりにつき約37万ドル(約5400万円)という計算だ。今回この協力金をFIFAから受け取るクラブは世界で416あるという。

 今回、各国代表は従来の23人より多い26人をW杯に連れていくことができ、試合中の交代枠も増やした。これらはコロナ対策などと言われているが、私はそれだけではないのではないかと疑っている。自分たちが選手にいかに過酷なことを強いているのか、彼らはわかっているのではないか。

「選手たちは疲労のなか、ケガをしないように祈る気持ちでプレーしている」と、ヴィニシウス・ジュニオールは語っていた。ケガをして一番大きなダメージを受けるのは、代表チームでもクラブでもなく、選手自身だ。その後の人生さえ変わってしまう可能性もある。

 心身ともに疲労した形で暑いカタールで戦う選手たち。ケガ人のリストが開幕後に増えていかないことを切に願う。

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