カタールW杯はジャッジにも新潮流。最新テクノロジーと、審判に求められる能力 (3ページ目)
日本の審判たちには課題も
これらにすべてパスした審判たちは、カタールでは隔離状態に置かれる。かつて筆者はコンフェデレーションズカップの審判団の広報を務めたことがあるが、普通の広報とは違い、誰も近づけないのが私の仕事だった。審判の宿泊先は多くのセキュリティに守られていて、許可がない限りはホテルにさえ近づけない。
審判団には14人のスペシャリストが帯同し、彼らが最高のジャッジをできるよう日々サポートする。フィジカルコーチ、ランニングコーチ、心理カウンセラー、ドクター、マッサー、テクノロジー講師、フィジオセラピスト、そして日本人の鍼灸師までいる。ふたつの部屋は彼らをケアする機器がいっぱいで、6台の車と2台のミニバスが24時間待機し、自由に使えるようになっている
今回、特筆すべきはW杯の歴史上初、女性審判が採用されたことだ。3人の審判と、3人のアシスタントレフェリーだ。審判のひとりが日本人の山下良美さんであることは皆さんももうご存知だろう。男子の試合における女性審判はオリンピックやユースの国際大会ではすでに取り入られてきた。今回が初というのは遅いくらいだろう。彼女たちが主審を務めるには、前述のテストで男子同様の結果が求められる。
ただし今回、山下さん以外に日本人の審判はいない。アシスタントレフェリーにもVMOにもいない。一番多いブラジルとアルゼンチンは、3カテゴリー合わせ7人ずついるし、W杯に出場しない中国でさえ3人が選ばれている。これはつまり日本の審判のレベルが、世界水準に達していないと見られているということだ。ちなみにVMOに関しては、24人に絞られる前に70人が候補として呼ばれたが、そのなかにも日本人はひとりもいなかった。これらは今後の日本の課題だろう。
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