カタールW杯はジャッジにも新潮流。最新テクノロジーと、審判に求められる能力 (2ページ目)
カタールで必要な強靭なフィジカル
そこでVAR導入にも尽力したFIFA審判委員会会長のピエルルイジ・コッリーナ氏が、どうにかこの時間を短縮したいと開発を急がせたのが、SAOTシステムだった。これを使えば平均25秒程度でジャッジができるようになるという。
「オフサイドは審判の仕事のなかでも一番ジャッジが難しい」と、コッリーナ氏は言う。
「だからこれは、正確で迅速な判定を下すのに、審判の大きな助けとなる」
このためFIFAは資金を惜しまずこのシステムを開発してきた。ちなみに8Kのカメラは一台25万ドルするそうだ。
オフサイドの様子はすぐに3Dアニメーションに作成され、プレーが次にストップしたタイミングで、会場のモニターやテレビなどで流される予定だ。これで見ている人もすべてが納得するというわけだ。このSAOTは昨年12月のアラブカップ、そして今年9月のルサイル・スーパーカップですでに導入され、どちらも結果は良好だった。
VMOの仕事はより重要性を増していて、連係も大事となる。そこで他の審判たちに先立ち、彼らはすでにカタール入りしている。
今回のW杯で、人数のほかにもうひとつ変わったのが、審判の選抜の仕方である
W杯で審判をするには、審判としてのキャリアのほかに3つのテストに合格しなければならない。ひとつ目は心理テスト。感情をうまくコントロールできるかなどがチェックされる。ふたつ目は知識と実技。新たに加えられたルールなどをきちんと理解しているか、そして導入された新テクノロジーを理解し、使いこなせるかが問われる。
そして3つ目がフィジカルテストだ。今回はこれが非常に重視されている。暑いカタールで90分間、もしくはそれ以上、審判をするには、かなりの体力が必要となる。実はそれもあって、今回は審判の年齢の上限が45歳から42歳に下げられた。経験も大事だが、何よりも必要なのが体力。スピードだけでなく持久力も重要となってくるため、テストではその点に重きが置かれた。
また、すべてのテストの前にはドクターチェックが行なわれ、長距離を走ったあとの心拍数や血圧が測られ、終了後には乳酸の蓄積具合から筋肉疲労の度合いを測る。アシスタントレフェリーは主審の80%の出来でいいとされる。
2 / 3