フリック監督率いる新生ドイツ。日本がカタールW杯の初戦で避けたかった、これだけの理由 (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

三冠達成したフリックの手腕

 ところが、それをピークにドイツ代表は再び下降線を辿り始め、2018年ロシアW杯では屈辱的なグループリーグ敗退。15年目のレーヴ監督が最後のビッグトーナメントとして臨んだ昨夏のユーロでも、決勝トーナメント1回戦でイングランドの前に散っている。

 そういう意味で、現在のドイツは再び上昇気流に乗るべく、チーム再建を始めて間もない時期にあたる。その大役を任されたのが、レーヴ監督の右腕として2014年W杯優勝を経験したハンス=ディーター・フリック現代表監督だ。

 フリックの名が広く知れ渡るようになったのは、2019年秋、ニコ・コヴァチの後任としてバイエルン・ミュンヘンの監督の座にアシスタントコーチから昇格してからのこと。当初は暫定監督としての指揮だったが、フタを開けてみると、コロナ禍のなかで行なわれた2019--20チャンピオンズリーグで圧巻の全勝優勝。国内リーグと国内カップも制して三冠を達成したフリックは、一躍注目の監督として脚光を浴びた。

 そのフリック監督が率いる現在のドイツは、昨年9月3日に行なわれたW杯予選のリヒテンシュタイン戦を皮切りに、これまで予選8試合と親善試合1試合の計9試合を戦って、通算戦績は8勝1分け無敗。失点がルーマニア戦(W杯予選)とオランダ戦(親善試合)の1点ずつしかないうえに、破壊力十分の攻撃力も際立っている。

 フリック監督が採用する基本布陣は、バイエルンでも多用していた4−2−3−1だ。ダブルボランチが起点となって攻撃を活性化させ、ボールを奪ったあとは両ウイングのスピードと突破力を起爆剤に、縦に速い攻撃を見せるのが特徴だ。

 とりわけ前線の人材が豊富で、1トップの一番手はティモ・ヴェルナー(チェルシー)だが、1トップ下にはカイ・ハフェルツ(チェルシー)、マルコ・ロイス(ドルトムント)、イルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・シティ)、そしてベテランのトーマス・ミュラー(バイエルン)などがひしめき、ハフェルツやミュラーはサイドや1トップでもプレーする。

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