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W杯開催地カタールの現在をルポ。ジャーナリストが感じた、開催にあたっての課題とは? (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【アプリでの通話はできない】

 移動も問題だ。公共交通機関のあるところはまだいいが、タクシーはとても数が少ない。ふだん、裕福なカタール人は自家用車(それも多くは運転手付き)で移動するし、労働者はタクシーなどには乗らないからだ。レンタカーはそれに輪をかけて少ない。もちろん代金も高い。

 もうひとつ困ったのが言葉の問題だ。カタールではほぼ英語が通じると言われているが、それは嘘だ。高級ホテルやレストランではストレスなく英語が通じるが、少し中心を外れるとアラビア語しか通じない。タクシーの運転手もレストランのウェイターも、英語をしゃべれる人はほとんどいない。

 イスラムの国カタールでは、アルコールは決められた場所でしか飲めない。W杯の時には特例を施すと言っているが、酒には高額の税をかけている。また、外国人であれば女性は頭を隠さなくてもいいとされているが、服装の自由度にも限度があるだろう。

 カタール国内では一部のサイトに閲覧の規制がかかっている。また「Skype」 などのメッセンジャーアプリは音声通話ができない。テキストやボイスメッセージは送れるが、通話はダメなのだ。だから海外とのやりとりは、国有電話会社に高い料金を払って国際電話をかけなければならない。これはサポーターやメディアにとって大きな問題となるだろう。

 コロナ感染対策としては、カタールは「EHTERAZ(イハテラー・予防措置の意)」というシステムを導入している。カタールを訪れる非居住者は、入国3日前までに必要な書類をカタール保健省に送付し、入国許可をもらわなければいけない。ワクチン接種証明、PCR検査陰性の証明のほかに、滞在先のホテルの予約証明、往復の飛行機の予約券などが必要となる。そのうえで、カタール国内で通じる携帯電話に「イハテラー」のアプリをダウンロードしなければならない。

 今回、この「イハテラー」のことを知らず、カタール航空に搭乗を拒否されていたサッカー関係者も見られた。カタールの空港では、イギリス人の男性が、持っていたUSBケーブルを危険物とみなされ、警察に拘束されそうになるのも見た。ダメなものはダメ。この国に「融通をきかせる」という言葉はないようだ。

 いずれにしても、多くの点でこれまでとは違うW杯になる。もし観戦に行くならば、それだけは覚悟したほうがいいだろう。

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