W杯開催地カタールの現在をルポ。ジャーナリストが感じた、開催にあたっての課題とは? (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【際立つ物価の高さとホテル不足】

 先日は、地元の伝統文化と融合したモダンで美しい7つのスタジアム(ハリーファ国際スタジアムだけ新設ではない)のお披露目があり、そのハイテクぶりと、大会1年前に完成させた手際のよさが称賛された。だが、それらも多くの出稼ぎ労働者の働きの上に成り立っている。

 今から2年前、まだ建設中のスタジアムを見に行った時は、比喩でなく、焼けつくような厳しい気候のなかで、外国人労働者が働いていた。多くはインドやネパールからの出稼ぎで、パスポートを取り上げられ、多くは片道の切符だけで呼び寄せられていた。建設中に多くの労働者が亡くなったことや過酷な労働環境は、これまでも国際的な人権団体から糾弾されてきた。

 だから今回、できあがった美しいスタジアムを見ても、私はどうしても素直に感動することはできなかった。

 そして今回、カタールに滞在してみて、さまざまな問題に出会った。それは今年、サポーターが直面する可能性のある問題でもある。カタール行きを考えている人たちのために、私がどんな経験をしたかをお話ししておこう。

 カタールW杯において、まず障害になるのは物価の高さだろう。金持ちの国カタールではすべての値段が高い(安いのは石油くらいか)。少なくとも最近の3回のW杯(南アフリカ、ブラジル、ロシア)のうちでは、最も出費が必要な国となるだろう。普通のスーパーで、コーラの缶は3ドル(約330円)、ミネラルウォーターのボトルなら5ドル(約550円)はする。カタールは食糧自給率がとても低く、ほとんどが輸入品のため、食品はみんな高いのだ。

 カタールは今、ホテルの建設ラッシュで、水の上に浮かぶフローティングホテルなど、たくさんのモダンなホテルが作られている。だが、W杯には約100万人のサポーターがやってくると予想されている。これまでのカタールの年間観光客数は300万人以下。ホテル不足は深刻になるはずだ。大きなホテルはFIFAやスポンサー、一部の金持ちサポーターにおさえられてしまうだろうし、なけなしの金をはたいてやってくる南米からのサポーターはどうしたらいいのだろう?

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