ユーロで優勝、イタリア復活の裏側。マンチーニはこうして「強い代表」を作った (4ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • photo by Reuters/AFLO

 決勝前夜、マンチーニはホワイトボードを使って、翌日のスタメンを発表した。サイドバックに、ケガで途中から離脱を余儀なくされたレオナルド・スピナッツォーラの名前を一瞬書き、その後エメルソン・パルミエリに書き換えたのもマンチーニらしい。

「もう君たちにこれ以上言うことは何もない。君たちは自分たちが何者なのかを知っている。我々が今ここにいるのは決して偶然ではない。我々の運命を司るのは我々自身だ。何をすべきか、もうよくわかっているだろう。落ち着いていこう。これはサッカーなんだ。サッカーは楽しむためにある」

 こう言われて奮起しない選手はいないだろう。

 どん底からヨーロッパチャンピオンとなったイタリア。批判精神の旺盛なイタリア人も、この勝利は手放しに喜んだ。ローマでの凱旋パレード(一説によると無許可だったらしいが)には、道を埋め尽くす大勢の人々が集まった。

 アッズーリのリーダー格のひとり、ボヌッチは自身のインスタでマンチーニの成功の秘密をこう書いている。

「ありがとうミステル。あなたの本当の勝利はこのカップを勝ちとったことじゃない。6000万人の国民が監督というこの国の人々を、すべて納得させたことだ」

 本当に大変なのはこれからだろう。9月からはカタールW杯に向けての予選も再開される。ユーロのイタリアに失うものは何もなかった。とにかくただ全力で攻めればよかった。しかし、これからは違う。守るものができ、誰もが大きな期待をかけるだろう。それでもこのチームならばやってくれるのではないか。そんな気持ちにさせてくれるのが現在のイタリア代表だ。

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