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スペインがまさかのユーロ敗退危機。なぜルイス・エンリケ監督に批判が集中しているのか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Reuters/AFLO

 ユーロ2020でスペインを率いるルイス・エンリケ監督が火だるまになっている。

「こんな采配では、スペインはどこにも辿り着けない! 地獄の手前まできてしまった」

 スペインの国内メディアはそんな論調で、スウェーデン、ポーランドに2試合連続で引き分け、スロバキア戦を前に敗退の危機に陥っていることを、容赦なく批判している。

 ルイス・エンリケのスペインは、グループリーグの2試合で圧倒的に攻めていた。スウェーデン戦のボール支配率は85%で、スペイン伝統の「ティキタカ」を体現。いくら「ボールを持たされた」とはいっても、なかなか叩き出せない数字だろう。

 負けたわけでもないのに、批判は過熱気味だ。

 もともとルイス・エンリケはメディア対応がヘタで、愛されているとは言えない。歯に衣着せぬ発言をして物議を醸すことも多い。バルセロナの監督時代も晩年はそれで炎上していた。今回も針のむしろだ。

ポーランド戦で先制点を決めたアルバロ・モラタとルイス・エンリケ監督ポーランド戦で先制点を決めたアルバロ・モラタとルイス・エンリケ監督この記事に関連する写真を見る ルイス・エンリケはユーロのメンバーに、レアル・マドリードの選手をひとりも選ばなかった。主将を務めてきたセルヒオ・ラモスだけでなく、リーグ屈指のディフェンスを見せたナチョも外した。国内ではマドリード系のメディアが大きな力を持っているが、これで完全に敵に回すことになった。

 ルイス・エンリケ自身、選手としてレアル・マドリードからバルセロナに移籍。レアル・マドリード相手に敵意をむき出しにして戦い、監督としてもバルサで三冠を取った背景もあるだろう。スペインには1970年代まで、マドリードを中心にした独裁国家がバルセロナを中心としたカタルーニャを弾圧してきた歴史があり、今も遺恨が消えない。必然として、憎悪の渦が生まれた。

 ルイス・エンリケの選手起用は癖が強いのは事実で、改善すべき点はあるが、やることなすこと批判されている状態だ。

 例えば、アトレティコ・マドリードの優勝の立役者であるマルコス・ジョレンテは、リーガ・エスパニョーラで名を馳せた。ポリバレントな選手でFW、トップ下、サイドアタッカー、ウィングバックなどをこなし、馬力あるアップダウンが特長。当然、代表にも選ばれた。

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