岡崎慎司はなぜウエスカの2部降格を阻止できなかったのか。去就に注目
今シーズンのリーガ・エスパニョーラで、昇格組のウエスカは下馬評どおり、最下位に低迷していた。しかし今年1月、ミチェルから監督のバトンを受けたパチェタが現実路線の戦いに変更すると。それが功を奏し、降格圏を抜け出ていた。
「勝てばいい、自分たち次第だ!」
最終節を前に、ウエスカのパチェタ監督はそう言って選手を叱咤していたという。事実、自分たち次第だった。勝利=1部残留だったのだ。
相手のバレンシアはすでに残留を決定し、何かをかけて挑んでくるわけではなかった。スペインでは、目の前で降格する姿を目の当たりにすることを、敵であっても嫌うところがある。かつては、リオネル・メッシが自分たちは消化試合で、残留がかかったデポルティーボ・ラ・コルーニャの選手たちに「今だ、攻めろ」と攻撃を促したと言われるほどだ。
そんな空気のせいか、ウエスカは圧倒的にバレンシアを攻め立てた。ただ、"空気を読まない"GKヤシパー・シレッセンにことごとくシュートを止められ、イ・ガンインに手こずる。それでもスコアレスのまま、1点を取れば勝てたはずだったが......。
アスレティック・ビルバオに勝利したエルチェに順位を逆転され、引き分けたウエスカの降格が決まった。
「気持ち的にはかなりきつい。チームとして誇り高い戦いをした自負はあるが......」
パチェタはその心境を語ったが、簡単に整理できるものではないはずだ。
最終節バレンシア戦は後半39分からの出場だった岡崎慎司(ウエスカ) その最終節、元日本代表FW岡崎慎司は後半39分から出場した。いつもと変わらぬゴールに突っ込む姿勢を示した。できる限りのことはやった。
今シーズンのウエスカは、1年でリーガ1部に戻ってきた。その立役者となったのが、2部でチーム得点王になった岡崎だった。プレミアリーグ優勝経験者の経歴は伊達ではなかった。ボールを呼び込む動きや勝負強さ、あるいは守備のスイッチを入れるうまさや献身性は、戦術的プレーヤーとして高く評価されていた。
岡崎は所属する2部のクラブを1部に導いた初の日本人選手となった。福田健二、鈴木大輔、柴崎岳、香川真司などもあと一歩のところまで迫りながら、手が届いていない。ひとつの伝説を作った。
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